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英語のサウンドとリズム

「サウンド」と「リズム」と「会話文法」と

 昨今、日本の書店には英会話本が満ち溢れています。ところが、英会話が音声の領域であるにもかかわらず、大半の英会話本が「英語の基本的な発音」の指導をほとんど無視して、知らぬ 存ぜぬを決め込んでいます。
 とくに英語のサウンドを日本語のカナに当てはめたものが数多く見受けられますが、とんでもない暴挙と言わざるを得ません。英語には日本語にない音がたくさんあって、カナではとても英語の音を正しく表記できないからです。カナはあくまでも日本語の音を書き表わすための文字でしかなく、英語のサウンドとは縁もゆかりもない存在です。
 正直なところ、日本人からカタカナ英語で話しかけられても、ぼくには何を言っているのかさっぱり聞き取れません。じつを言うと、ぼくはカタカナ語を書くのが苦手で、英語をカナで書く表記法がどういう規則性を持っているのか、いまだに理解できていません。
 また、日本の小学校ではローマ字を使って日本語の五十音を表記する方法を教えていますが、これが日本人の英語を駄 目にしている原因のひとつだと思います。つまり、日本語の母音は5つだけで、a・e・i・o・uの5文字をこれに当てはめてしまうため、英語の中のこれらの文字を目にしたとき、ついつい日本語の音で読んでしまって、英語話者に理解できない英語を話す結果 を招いています。
 ローマ字による日本語表記法は、日本の地名・人名を書き表わすのに必要で、またワープロを使うときにも欠くべからざる手段ですが、それが英語の綴りといっさい関係ないことを事前に教えるべきで、ローマ字学習より英語の綴りの法則を学ぶことを優先させるべきとぼくは主張します。
 そしてまた、日本では発音記号を用いて英語の読み方を指導していますが、これが日本人の英語下手を助長しています。言語学者でないかぎり、アメリカ人で発音記号を読める人など誰もいないし、その存在すら知られていません。英語の綴りは発音とほぼ一致しており、英語を読むためにだけ発音記号をわざわざ学ぶ必要はないのです。そもそも発音記号を用いて英会話をモノにしたという人にぼくは出会ったことがありません。
 とはいっても、英文の読書量が足りない日本人にとって、発音記号は知らない綴りの読み方を知るには役立つ存在です。しかし、その読み方がわかったとしても、英語の発音が万全になるわけではありません。発音記号のシステムが音声上のたくさんの不備な点を抱えているからです。
 英語の綴りを読むだけなら、「PV法」という優れた方法があります。ぼくはアメリカの小学校で読み書きを学びましたが、一時期「フォニックス」を用いて綴りの読み方を教わったと記憶しています。アメリカ人は小学校に入る以前、すでに英語を話せるわけですから、フォニックスのような中途半端な読み方指導でも十分に通 用するし、ぼくには文字の読み方で苦労した覚えがないので、英語の発音を大袈裟に考えなくていいと思っていました。ところが、PV法を詳さに検討していくうち、英語の発音が苦手な日本人にはこれが最適の方法であると気づいたのです。ぼくはいま「PV法以外に日本人の英語の発音を矯正するシステムはない」と宣言します。
 ぼくはさっそくPV法による26の子音と18の母音に則って、本書のために、英語の音を出すときの口の動き全般 をイラスト化することに取り組みました。そのさい、グラフィックの製作過程において、YES(英語学校)を経営している世羅洋子氏から多くのアドバイスをいただきました。
 ぼくはアメリカ人ですから、もちろん英語はペラペラすぎるほどペラペラですが、だからといって、英語の発音の仕組みや文型の構造にとくに詳しいわけではありません。日本人が日本語を話せても、日本語をどう発音し、文法がどうなっているかをよく知らないのと同じことなのです。世間では英語の発音は英語話者から教わるものだと決めつけている人がいますが、それはまったくの迷信で、もし話せることと教えることとが同じ技術なら、日本人はもっと英語が上手になっているはずです。なぜなら、何万人もの英語話者がいま日本で英語を教えているからです。「英語を話せる」ことと「英語を教える」こととは別 次元の問題なのです。
 本書は英語音声学の教科書ではありません。英語の1つ1つの音声を解説するかたわら、それぞれのサウンドを含むフレーズの「ボイス・プリント」を呈示することで、英語を話すリズムを養成することを目標としました。ぼくの願いは日本人が等しく英語を話せるようになることで、本書が目ざすところは実用英語(Practical English)にほかなりません。
 なお、本書の日本語への訳文と「会話文法」ついては、新日本教育図書鰍フ藤田修司社長からいくつかの提案を受け入れました。本書には日常会話で使用される英文型のあまねくが体系的に選択して網羅されており、これらを口癖にするまで練習することで英語の会話文法の基本がモノになるとぼくは確信しています。

バブ・ゴーデン

2001.12.25