■バブ・ゴーデン氏について
「ボイス・プリント」と「会話文法」
バブ・ゴーデンは、私たち日本人にとって、天からの授かり人と言って決して過言ではありません。
バブはアメリカに移住したフランス系カナダ人の父とオーストリア人の母との間に生まれました。生誕地はフロリダ州で、もちろん母国語は英語です。フロリダ州は退職者が多い地域で、他所者が多いため、ジョージア州やアラバマ州のようなアメリカ南部の強い訛りはなく、バブも方言の影響をほとんど受けていません。
バブは幼いころから父親が親戚の人たちと話すフランス語を耳にしてきましたが、彼が最初に興味を向けた外国語は韓国語でした。バブに言わせると、東洋への憧れに似た感情があって、韓国語に接近したとのことです。
で、バブは家計を助けるため、高校時代から英語を話せない韓国人コミュニティに入って、彼らが経営する中華料理のレストランでアルバイトをしながら、実用韓国語を身につけました。高校で履修した外国語も韓国語でした。
バブは空軍の専門課程でエンジニアとしての技術を身につけたのち、希望する赴任先を韓国と指定しましたが、勤務先は沖縄でした。
沖縄へ赴任後、バブはすぐさま日本語の独学を始めます。彼には教科書もなく、教師もいませんでした。日本語を勉強するためのバブ自身が考えたカリキュラムは、韓国語をモノにしたときと同様、身の回りに転がっている実用日本語のノートを作って、それを片っ端から使ってみるという学習法でした。いうなれば、バブ個人の辞書作りを実践したわけです。
日本語を使う場面は、軍の至る所に日本人従業員がいたこともあって、先輩や同僚が目をむくほどの上達ぶりを示しました。いまでは彼にしか使えない独特の日本語を作り上げています。また、最近はワープロ頼りではありますが、基本を学んだおかげで、書くこともこなしています。
彼はまた、趣味人として、素人はだしの沖縄三味線をつまびくほどの音楽人ですが、その才覚を生かして、「英語の綴りと音声の関係を示すボイス・プリント」を考案しました。
彼の日本語は生活の中で覚えた実用語ですから、日本語を英語に逐語的に直訳するのではなく、ある状況で使われる最もふさわしい言葉を取り出して訳すものです。それゆえにか、彼は英語と日本語との構文上の違いについて多くのデータを持ち合わせており、その分析の仕方は、旧来の「伝統的な文法」とは一線を画しており、彼独自の「会話文法」として実戦的な簡素な考え方を確立しています。
バブの英文法はとても簡単です。英語のフレーズを形態的に約100種に分類したあと、それぞれの形で最も普遍的に使われる文をキーフレーズとして、これをボイス・プリントに作っていますが、これを練習すれば、英語のリズムが身につくばかりか、構文の形までモノにすることができます。
ちなみに、『英語のサウンドとリズム』には69の文型パターンがボイス・プリントにして紹介されていますが、日常会話ならこの数だけで十分です。これらの基本文型を言えるようになれば、応用もきくので、必要最小限の英会話は十分にこなせます。
バブは彼が持っている電機通信技術を嘱望され、ひところサウジアラビアで働いていましたが、かの国の政治事情にからんで帰国を余儀なくされ、その後アメリカに生活の場を移していました。しかし、バブの東洋への想いは捨てがたく、再び民間人として沖縄を人生の拠点とするに至っています。
古代われわれがアジア大陸から多くの帰化人を迎えたように、また明治時代に欧米から近代化の技術を取り入れたように、そして第二次世界大戦後にアメリカから科学や経済のノウハウを学んだように、バブ・ゴーデンを沖縄いや日本社会が上手に受け入れることができれば、日本人の英語力は著しく向上することでしょう。英語は英語話者に習うのが一番いいのではないでしょうか。
(文責:新日本教育図書)
2002.2.28(木)