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英語学習室(2-2)PV法 Simple is Best (2) より

prefer を before と聞き違えて

 “Would you / prefer a smoking / or a non-smoking table ?”という文で prefer という語をはっきり“それ”と認知できたでしょうか?
 じつは、多くの人が prefer を before と聞いてしまうことがわかりました。枕言葉とも言うべき Would you を除いて、さらに or 以下をとりあえず棚上げすると、perfer a smoking (table) という<V+O>の型だけが残るので、文の構造上 before であるはずがないのに、なぜ聞き違えるのでしょうか。調べてみると、prefer という語に慣れていないせいもありますが、なんとなく聞き知っている before と取り違えてしまったという笑うに笑えない一席でした。
 prefer の pre- は「前の」「あらかじめ」などの意を示す漢字の「前」「先」に相当する接頭辞です。pre- で始まる単語は全体の 0.7%にのぼるほど多く、この接頭辞を知っておくと単語を覚えるには非常に便利です。また、pre- の発音は‘pr’までが全語に共通する〔p〕+〔r〕=〔pr-〕というブレンド音ですが、残りの‘e’の部分は下記の3種類に分かれます。

(1)長母音の[i:]  preview(予告編)、prefix(接頭辞)、prefab(プレハブ)、pretext(口実)
(2)短母音の[i]  pretty(可愛い)、prepare(準備する)、pretend (ふりをする)、premium(割増金)
(3)短母音の[e]  press(押す)、president(大統領)、prelude(前奏曲)、prey(獲物)

 (1)の長母音の場合、別の単語の前に pre- をくっつけただけの合成語に近い印象があります。(2)(3)ではあとに続く音に影響を受けますが、怪しいと思ったときは必ず辞書で調べるべきです。
 prefer の pre- は(2)の短母音です。before と間違えた理由は〔pr-〕と〔b-〕の関係においてです。〔p-〕と〔b-〕はともに「唇を口の中に巻き込むようにしてつぐみ、唇をぱっと離して出す破裂音」で、前者が無声音、後者が有声音です。
 ところが、ブレンド音の〔pr-〕は〔p-〕と〔r〕の2つの音から成るものの、1つの音のように素速く言うため、日本人の耳には混じり合った1つの音に聞こえて、〔b〕の音と聞き間違えることがあるのです。
 冒頭に掲げたフレーズは構造的にはそんなに難しい形ではありませんし、smoking と non-smoking を接続詞の or で選択させているので、preferという語の意味を知らなくても文の意味が推し測れます。しかし、英文のシンタックスがまだよく身についていない場合、なまじ知っている単語が頭に浮かんでくると、その単語を代入してしまうため、全体の意味が混乱することがあるのです。この文では before という知り合いの語が邪魔した例でした。
 なお、ブック5で“Do you prefer a smoking 〜 ?”(4-5) の形で再び prefer が出てきますが、この場合は〔pr〕のブレンド音を「パ」1つのようにとらえて「パファー」のように聞こえるとのことです。でも、before と聞き間違えないだけ意味を汲み取りやすいようです。
 じつを言うと、英語話者であってもすべての音を完全に常に正確に聞いているわけではありません。前後の関係で察しをつけているにすぎないのです。
 一方、日本人は英語のシンタックスに十分に慣れていないし、単語・熟語の在庫も十分でないため、間違った推理をしやすいのです。それゆえにこそ、英語のサウンドの基礎をPV法でしっかり固めておかなければならないことをひしひしと感じとっていただきたいのです。