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英語学習室(3-2)音則法(6) Simple is Best
(3) より
aとanのリンキングを考察する
当たり前のことですが、日本人の英語下手は、子供のときからこれに接してこなかったからにほかなりません。話し言葉は頭にひらめいたメッセージを瞬間的に声にしますが、誰であれ特別
に意識することなくほとんど自動的にそれを行なっています。
ピアノを弾ける人は譜面だけを見て手は鍵盤の上を走らせますし、タイピストの指は原稿を読むだけでキーボードの上を素速く滑ります。つまり、脳の働きと手の動きとが一致しているわけで、話し言葉では、それが話し手の脳の働きと口の動き、または聞き手の聴覚と脳の働きということになるわけで、ともかく信じられないほどの猛スピードで言葉が脳の言語野を飛び回っているのです。
端的に言えば、言葉はほとんど無意識に口の端にのぼってくるわけですが、いちいち考えているようでは、たとえば英語の冠詞の
a / an または the /
the の有無や選択ができるはずがありません。裏返せば、子供時代に英語を使ってこなかった日本人が、いくら考えたところでこれら冠詞を正しく使えるはずがなく、むしろ考えているから使えないとも言えましょう。
そこで、この稿では a と an の音則を取り上げますが、言うまでもなく日本語には冠詞がないため、日本人が英語を話すとき、それらの使い方に悩まされます。
英語話者はまず不定冠詞(a、an)か定冠詞(the)のどちらかを判別し、ついで冠詞のあとに続く単語の語頭音が子音か母音かで
a と an または the と the とを使い分けています。また、加算名詞(数えられる名詞)か不可算名詞(数えられない名詞)かで冠詞の採否を定め、前者であれば単数か複数かで冠詞の有無を決めるなどしていますが、非英語話者にとっては神業としか思えない思考が彼らの頭の中でなされています。英語話者は前記のいくつもの用法を意識して話しているわけではありませんが、口にした結果
は文法に則っているのです。
では、まず a から見ていくとして、ブック3から例文を抜き出してみると、この音則は例外なく
a の後ろで切れていることがわかります。冠詞はつまり限定詞として働くわけですが、文法上の
a の役割は、あとに続く形容詞や名詞を修飾することです。ところが、音則上は後ろの語と切り離されています。もっとも、英語話者は音則も文法もまったく意識せず話しています。それにもかかわらず、文法どおりに話されているところが言語の不思議な点です。
A|few minutes|ago.
(3-3)
I'll|come back|in
a|few minutes. (3-6)
I|have a|bad|head
ache. (3-4)
I'm a|Japanese|business|woman.
(3-8)
You're a|good|dancer
! (3-7)
Are you|having a|good
time ? (3-8)
One|hot dog|and
a|coke,|please.
(3-5)
To|attend a|lecture.
(3-1)
What a|nice|name
! (3-7)
How about a|beer ? (3-7)
May I|see a|menu,|please
? (3-10)
May I|ask you a|question
? (3-10)
Can I|get you a|drink
? (3-7)
Where|can I|catch
a|taxi ? (3-9)
Where is a|good place|to
buy|souvenirs ? (3-9)
There is a|bank down|this
street. (3-9)
I'm a|little|tired.
(3-7)
最初の“A few minutes ago”のフレーズでは、a の1語だけを区切ることで
few minutes (ago) を限定しています。この a の使われ方からすると、ここでひと区切りすることによって、次の語が意識されやすくなっている、と考えるのはちとうがちすぎでしょうか?まるで「これから告げる言葉は
a によって限定されるんだぞ」と言っているみたいですが……。
最後の“I'm a little tired”での a little は挿入句ですが、音則が優先されるので、やはり
a のあとで切れています。
ついで、an の例文を見てみると、この語はほとんど a|n
の2つに分断されると考えていいでしょう。
A|n hour ago.
A|n ambulance|will
be there|in a|few
minutes.(3-3)
I'll|send a|n
ambulance there|shortly. (3-3)
I need an|ambulance. (3-3)
I'm a|n engineer. (3-8)
Can you|give me a|n
estimate ? (3-2)
最初の文の an hour の an は a|n hour
と分割され、次の an ambulance で始まる文でも an がはっきり2つに分割され、a|n
ambulance という音則を作っています。send an ambulance の場合も send
a|n ambulance となっています。
ところが、need an ambulace では need の中の〔ee〕が長母音のため、どちらかと言えば、nee|d
an|ambulance となって、an の n が次の語への渡り音になっていません。こちらのほうが例外的と見なせますが、リンキングの音則は地域差や個人差もからんで一筋縄ではいきません。しかし、音則も人間の言葉であるかぎり必ず数に限界があります。
日本人には an 〜でのリンキングがとにかく難しく、a|n
engineer と n が渡り音になっている点で苦労すると思いますが、慣れれば楽になりますし、そのうちルールを考えずして自然に
a とan の音則が口から出るようになるでしょう。
また、an estimate では、estimate が3音節で、最初の母音にアクセントがあって、次の2つの母音が弱母音のため、a|n
estimate と発音されたとき、日本人には「ア・ネスティメ」のように聞こえるので、estimate
自体が聞き取りにくくなっています。
なお、another という語は an other が合成されたもので、もとに還元させた状態でリンキングの音則をうかがうと、次の例のように
a|nother となります。
May I|have a|nother
fork? (3-10)
a|n other から a|nother
になったことがわかりますが、リンキングの音則はクイズを解くときみたいに楽しみながら身につけてください。
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