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■英語学習室(5−1)シンタックス法(12)−Simple is Best(5)より

2002.9.11(水)

■pleased は誰が口にできる表現か

 レッスン5−1は初対面の人同士の自己紹介を兼ねた出会いの「ちょっとした会話」例ですが、その中に“Nice to meet you.”というフレーズが出てきます。この挨拶はレッスン1−1でも登場しましたが、そのとき“Pleased to meet you.”というこの文型とよく似たフレーズがありました。
 つまり、両者とも何かが省略された「省エネ文」です。よく似た形からすると、はたして省略されている語句が同じものではないかと思いがちですが、省かれた部分を下記にあぶり出して違いを示しておきます。

  (It's) nice to meet you.
  (I'm) pleased to meet you.

 上段は“it's”が省かれていますが、下段で省かれている部分は“I'm”です。なぜ、両者は違っているのでしょうか。その理由は pleased という語の性質を調べてみるとわかります。pleased は形容詞ですが、この語は動詞の please から派生しており、この語は自動詞・他動詞の両方に使われます。自動詞の please なら「気に入る」という意味ですが、この pleased は「喜ばせる」という意味の他動詞から生じた語と見なせます。
 “I'm / pleased.”だけを見ると、「私が存在している/喜んだ(状態で)」という意味ですが、これはもともと「受動態」(受身形)と見なせる形です。このフレーズが日常的に使い込まれているうちに、いつしか pleased が「嬉しい」という意味で形容詞化したしだいです。
 これに似た関係は tire(動詞)→ tired(形容詞)という派生結果の“I'm tired.”というフレーズに代表されますが、この文型は“I'm busy.”とまったく同じ<S(主語)+ beV+C(形容詞)>となる be 動詞文の基本形です。
 とすると、pleased の性格が判明しました。そして、pleased を口にできる主語が「喜びの感情を表わすことのできる人間」にほかならないことが明確になりました。しかも、おもには自分が口にする言葉ですから、省かれた部分が「一人称」の“I'm”であることは明白です。
 自分の誕生パーティに集まってくれた人たちに対して、次から次へと挨拶するとき、いちいち“I'm”を告げるのは面 倒だし、そもそもダサイ言い方と思いませんか。“Pleased to meet you.”とだけ言うほうがかっこいいんではないでしょうか。丁寧に言うなら、次のようにむしろ pleased を別の言葉で飾って言うのがふつうです。

  I'm very pleased to meet you.

 ほかにも“I'm pleased 〜”を使った表現には次のような例があります。

  I'm pleased to hear that.     (それは嬉しい知らせですね)
  I'm pleased to let you know this. (いいお知らせがあります)

 両文とも最初に「私は嬉しい」と告げています。つまり、前半で「私が喜んでいる」状態を表現していますが、その内容が to 以下に示され、上段では「それを聞いて−−嬉しい」とあり、下段では「あなたにこれを知らせることが−−嬉しい」となっています。
 人にあらざる「物」が pleased することはありません。もっとも、人間に似たロボットなら“Pleased to meet you.”と言うかもしれません。
 ペットは人間の言葉を話せないので“I'm pleased 〜”とは言いませんが、ペット好きの人が犬を見ると“He's pleased 〜 .”とか、“She's pleased 〜 .”と言います。ところが、犬嫌いの人にとっての犬は it にほかならず、物と同じ扱いになって、感情を挟み込む余地がなくなるので、ふつう pleased は使いません。
 一方、nice は「物事の状態」を表わす形容詞ですから、<主語+ be 動詞>の形は“It's 〜”になります。pleased できるのは人間の特典と言っていいでしょう。
 “Nice to me you.”および“Pleased to meet you.”の完全文は、いずれも<S+ be V+C+ to 不定詞>という形ですが、両者には主語の人称に違いがあって、主語が変われば、be 動詞の形も変わってくるのは当然です。
 なお、学校で教わる文法では nice のあとの to 不定詞を「形式主語」と見なしています。一方、pleased のあとの to 不定詞は pleased の状態を説明していると解釈します。なんだか面 倒になってきそうなので、この最後のパラグラフの説明は聞き流して、形容詞の nice と pleased の性質の違いとして、両方を比較するだけにとどめたほうが無難でしょう。