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■英語学習室(6−5) シンタックス法(15) “Simple is Best”(6)より

2002.12.3(火)

■音則より文則が優先する文

 長い文では、音則より文則が優先することがあります。慣用的なフレーズなら、話し手が手を抜いて発音しても、聞き手が了解しているので、話しやすい音則で話されますが、聞き手が何も了解していないとき、話し手は相手が正確にわかるように、意味のかたまりをひとつずつ順番に告げていきます。
 下記のフレーズはレッスン6−9にある飛行機に乗るさいに預けた手荷物が baggage claim(手荷物受取所)のベルトコンベアから出てこなかったとき、係官にそのことを告げるフレーズです。グレースがこのフレーズを言うのに5秒近くかかっているので、日本人がこれだけの長い文をスムーズに言えるかどうかスピーキング上の難しさはありますが、少なくともリスニングに慣れておく必要があります。

  Excuse me,|we just|came in|on the flight|from Tokyo|and|we can't|find our luggage.

 タテ線は音則上の区切りですが、珍しいことに意味上の区切り線もぴったりこれに重なります。棒訳すると次のようになります。

  「あのう/私たちはちょうど/到着した/飛行機で/東京から/そして/私たちはできない/自分たちの荷物を見つけることが」

 「東京から来て、その便に乗せた荷物がない」と言っているだけの、なんてことない内容の文ですが、練習が足りないと、これだけの長さをなかなかいっきに言えるものではありません。
 この文は and でつないでいるので「重文」(compound sentence)と呼ばれる形です。呼びかけの excuse me と接続詞の and を除いて2つのフレーズに分解すると次のようになりました。

  (1) We just / came in / on the flight / from Tokyo.
  (2) We can't / find our luggage.

 (1)は動詞文で、句動詞の came in は自動詞です。したがって、on the flight も from Tokyo も副詞類です。just も副詞ですが、この語がないと「いま着いたばかり」という緊迫感が出てきません。
 on the flight なしでも言えますが、あったほうが臨場感が出てきます。Tokyo の部分を入れ替えてバリエーションの練習を何度もしてください。
 (2)は can't が入っているので助動詞文です。find が他動詞で、our luggage が目的語ですからVO型ですが、この部分を口癖になるまで練習しておけば、いろいろ応用できます。
 このあと係官から“What is your flight number?”と聞かれて、“United Airline 833 from Tokyo.”と2つの内容を告げていますが、最初に from Tokyo と伝えているので、改めて言う必要はないのですが、念のためにもう一度繰り返しているのです。
 誰かがある状況に立たされたとき、実際にどう言うかは個々に違ってきますが、“Simple is Best”ではあくまでもギルバートとグレースが自分ならこう言うというフレーズを採用しています。ほかのネイティブ・スピーカーに同じ内容の会話を作らせると若干フレーズが変わってきますが、それ以前にとにかくギルバート&グレースの調子を身につけることが千人斬りの一人目になります。
 人は話し相手に何かのメッセージを伝えるとき、無駄なことを何ひとつ告げずに理路整然と話しているわけではなく、むしろ場面 の印象に基づいて感覚的に話しています。
 スピーキングの練習では、現実のシーンを想定することが大切です。実際その場にいるつもりで前半と後半をそれぞれ別 々に練習したあと、「どうしようもない」という意味の両手を広げる動作を加えて練習すると身につきます。
 そうした意味で“Simple is Best”はリスニングというより、スピーキングの練習に重きを置いています。