■フォニックスを“Between the Lions”に見る

2003.6.6(金)

 子供たちの脳は、海綿が水を吸い込むように、どんどん英語を吸収していきます。子供たちに教える範囲を大人が先回りして制限したところで、そんなハードルをものともせず、世人の常識をはるかに突破して、彼らは言葉を自分のものにしていきます。
 ぼくは今年、中学校のAETに配置されました。その結果、去年ぼくが小学校で教えた子供たちを再び教えることになりました。そして、最初の授業で教科書の約30ページを読み終えました。進み方が早すぎると言われても、子供たちがすでに身につけている内容ばかりで、新しく教えることが何もなかったからです。
 昨年はいきなり小学校で英語学習が始まりました。カリキュラムも、テキストも、教材用ツールも、何ひとつ準備されておらず、指導のいっさいがっさいがAETに任されました。そのため、ぼくは毎回の授業の小道具作りで午前3時になることがしばしばでした。
 でも、ぼくが教えた内容が子供たちの頭にしっかり入っていることを確認できて、喜んでいます。たとえアシスタントであっても、先生と名のつくかぎり、「生徒が成果を出すことが先生の価値を決める」ことになると思うからです。
 「いままでこんなに生徒の理解が早いことはなかった」という声を小耳に挟みましたが、言葉はできるだけ早い年齢で始めるべきことを証明するためにも、昨年から始まった小学校英語に関する全調査をして、効果の有無を確かめておく必要があると思います。まさか、ぼくが教えた生徒だけが例外ということはないはずです。
 ぼくの方法とは、授業で慣用フレーズを教えて、授業時間外に生徒と顔が会うたびに、そのフレーズを使って話しかけるものです。たとえば、“What're you doing? ”を教えたら、昼食中や休み時間にまんべんなく生徒に話しかけて、“I'm / We're -ing (〜).”の文型で答えてもらうというやり方です。もちろん he も she も they もすべて使います。進行形という文法用語は使わなくても、生徒たちは自分たちが使う言葉を十分に理解していきます。
 ぼくが最も重視したのは「発音」指導です。日本語を学ぶさい「五十音」の発音から始めるのと同様、ぼくも標準米語の45音(子音27/母音18)の基礎サウンドを正しく発音させることに指導の重点を置きました。ちなみに、こうした基礎サウンドの学習とフォニックスは同じものではありません。
 フォニックスはNHKテレビの“Between the Lions”の中で行なわれていますが、これは非常にいい番組で、学習者の範囲は限られますが、オススメ品のひとつです。この良質のメニューは、すでに英語を話せるけれど、まだ文字を読めない英語話者の小学校低学年生を対象に作ったものです。『セサミ・ストリート』よりちょっと上の年齢向きに作られているので、英語圏で児童体験を持たない学習者にはうってつけの教材と言えます。
 6/5放送分のフォニックス指導では、短母音の‘i’ を意識させるために‘ig’の綴りをテーマにしていました。最初に、この日の物語に登場する the big wolf の big を取り上げ、wig(かつら)→ wiggle(ぴくぴく動く)→ iggle(そそのかす)→ jiggle(軽く揺さぶる)と続けて、Sig(人名)と pig と jig(速いテンポの踊り)の3語を組み合わせて“Sig and pig are dancing jig.”などといった文を作ったり、再び wig から big に転じて、キャラクターの a big lion を説明したあと、ついで big → bag → bat → bit → it → sit → six のような部分的な音の変化の様子を見せながら、使用頻度の高い it と in と is を認識させるよう作っていました。日本人にはなじみの薄い単語がぽんぽんと出てくるので、初学者には理解が難しいはずですが、アメリカ人の子供にはなんてことない内容です。
 また、この日は短母音の「a, e, i, o, u」に‘silent e’が付くと、音が長くなってアルファベット文字の名前の「A, E, I, O, U」になることを pin → pine, plan → plane, cub → cube, tub → tube, can → cane などを例に挙げて説明していました。
 このあと intelligent という単語を「in, tell, i, gent」と各音節ごとに区切って読ませ、「ほら、読めたでしょう」とするあたりからして、この番組が「英単語の読み方指導」以外の何物でないことは明らかです。
 フォニックスは英語を話せる子供たちにはとても役立つシステムで、英語圏では利用価値が高いものです。しかし、英語の音を発音できない日本人とって適切な発音学習法とはなりえません。いつまでもそのことに気付かない日本の英語教育界にぼくはいつも驚いています。

(バブ・ゴーデン)