■英子供たちの脳は素晴らしい
2004.3.10(水)
【Q】NHKで放送中の“Sesame Street ”や“Between the Lions”には、変な声色を使ったり、訛りの強い発音をするキャラクターが出てきます。子供の言葉もわからないのに、大人の言葉がわかるはずないと言う人がいますが、こういう番組を見て、英会話の勉強になるのでしょうか。(I・D)
【A】最近、ある生徒が“Tweety Bird”のペンシルケースを使っているのを見て、自分の子供時代を思い出しました。沖縄にはあちこちに米軍のベースがあるので、生徒はたぶんそのどこかで買ったと思われますが、その蓋には次のように書かれていました。
I tawt I taw a puddy tat.
(I thought I saw a pussy cat.)
( )内に示した文が正しいものです。“Tweety Bird”は Warner Brothers
が製作した有名なルーニートゥーン cartoon のシリーズのキャラクターですが、物語はいつもその家のおばあさんが「いい子ちゃんだから、ひとりでお留守番しててね」などと黄色い小さな愛鳥に語りかける場面から始まります。
おばあさんが外出すると、さっそく猫のシルベスタが入ってきて、Tweety Bird
を食べてやろうと狙います。上に示した奇妙な言葉は、Tweety Bird が「あたし、にゃん子を見たと思うんだけど」とつぶやくセリフです。
Tweety Bird は自分が発音できない音のいくつかをほかの音に変えて言います。舌が短いので〔th〕の音はまったく出せません。上の言葉では、次のような音の切り替えがなされています。
〔th〕→〔t〕(thought → tawt)
〔s〕→〔t〕(saw → taw)
〔s〕→〔d〕(pussy → puddy)
〔c〕→〔t〕(cat → tat)
〔c〕のつづりには〔k〕と〔s〕の2種類がありますが、cat の〔c〕は〔k〕です。Tweety
Bird は〔th〕〔s〕〔c = k〕のいずれも〔t〕にして、pussy の〔s〕を〔d〕に変えています。
〔t〕と〔d〕はともに舌先を上の歯に当てて、肺から出てくる空気をいったん遮断したあと、舌を離して出す破裂音で、前者が無声音で、後者が有声音です。
〔t〕と〔s〕と〔th〕には共通点があります。〔t〕では舌先を上歯の歯茎に当て、〔s〕では舌先を下の歯の裏に当てます。〔th〕は舌を上下の歯に挟んで出す音です。いずれも舌先を使って出す音ですが、舌を上げたり、下げたり、中間に持ってきたりする点が違っています。
日本語との共通性を無理に捜すと、〔t〕が「タ行」で、〔s〕が「サ行」になりますが、〔th〕は日本語にない音です。日本人は〔th〕をサ行に近寄せて発音し、たとえば
thank you を「サンキュー」と言います。欧州系の人にこれを「タンキュー」のように言う人がいますが、それはやはり母国語に〔th〕音を持っていないからです。
ちなみに、thought の〔ough〕は saw の〔aw〕の「別の綴り」で、両者の音はまったく同じです。
ルーニートゥーンのシリーズに登場するほかのキャラクターにもそれぞれ苦手な音があって、メル・ブランク(故人)はひとりですべての声色をこなして、彼は子供たちを大いに楽しませてくれました。
ぼくは「子供たちの頭は本当に素晴らしい」と思います。間違った音をいろいろ聞いても、ほかの場面で正しい音をたくさん聞くので、何度も聞いているうちに
Tweety Bird の発音がおかしいことに気づきます。子供たちの脳は間違ったものを聞いても、自然に正しいモードに調整するようにできています。残念ながら、この能力は脳が成長するにつれて退化します。
『セサミ』も『ライオンズ』も Tweety Bird の流れを汲むもので、これらの番組はアメリカの子供向けに製作されたものです。したがって、日本人の成人が見ても英語力の向上に役立つ点は少ないと思います。しかし、参考になる点はたくさんあります。
(バブ・ゴーデン)