■過去完了形はタイムマシーンに乗って
2004.6.11(金)
小学校のAETは、授業用の資料作りに追われて、午前様の作業になることが少なくない。授業の準備だけで比べると、中学校では楽させてもらっている。教えるカリキュラムが完成(?)しているからで、AET自身が準備を必要とするツールは何もない。
ぼくの勤める中学校は1学年5クラスだから、3学年で15クラスあるが、授業が重ならないかぎり、お呼びがかかった教室にはすべて出席している。授業が始まって、担当教師が「今日は受動態を勉強します」と言ったとき、はじめてその授業内容を知るわけだから、あとで考えるとき、教えたクラスが何年生だったかわからないことがしばしばある。教科書の表紙に印刷された学年の数字を隠して、どちらが何年生用であるかを言い当てるには多少時間がかかる。
それはたぶん、ぼくが英語のネイティブ・スピーカーだからであろう。2年生と3年生の英語の教科書は、ぼくにはほとんど同質に見えるので、その日に教えた内容を覚えてはいても、それぞれ何年生の授業であったかは、生徒の顔で思い出すしかない。
担当の先生が「今日は現在完了形を勉強します。初めにバブ先生から説明してもらいます」と言われたら、ぼくは教科書に出ている現在完了形の英文(不自然な文が多くて、例文で使うには気がとがめるが、生徒の試験に役立つので妥協している)と日本語訳との語順の違いを図式的に黒板に書き出すことから始める。
(1) I have / been / in my room / since this morning.
(2) I have / lived / in Japan / for five years.
(3) I have / had the sweater / for two years.
そして、現在完了は「済んだこと」を表わす文だから、動詞は「完了用の動詞」(過去分詞形)を使う必要性を説明し、それが
be 動詞文なら been で、動詞文ならそれぞれの過去分詞形を使うことを解説する。
そのとき、have はいったん黒板から消して、(1)の been が現在形なら am で、過去形なら
was になることを生徒たちに確認させる。(2)の lived と(3)の had は過去形と過去分詞形がたまたま同じ語形であることをジョークまじりに説明しておく。
そして、(1)がもともと<S+ be V+A(+A)>型、(2)が<S+V+A(+A)>、(3)が<S+V+O(+A)>型の文であることを生徒たちに確認させるが、彼らの大勢が完全に理解するまで先には進まない。生徒の理解の状況をチェックする作業をぼくはとても大切にしている。
そのあと、おもむろに、それぞれの文に have を加えて、have という助動詞が「現在の立場」を示す言葉で、その立脚点(たとえば高い所)から、(1)では「朝からずっと自分の部屋にいる自分」、(2)では「5年間日本に住んでいる自分」、(3)では「2年前に手に入れたセーターを持っている自分」を観察する文であることを図示してみせる。
そして、授業時間内に全員の生徒から“I've eaten gohya.”“I've been in
this room”“I haven't been to America.”“I've studied English.”“You
have been an English teacher in our school since 2003.”“I've touched
〜.”などの作文をしてもらう。もちろん間違える生徒もいるが、その場ですぐに訂正してあげるのがいい。
生徒の理解が早ければ、次にタイムマシーンの絵を書いて、have を had に代えて、映画『バック・トウ・ザ・フューチャー』を話題にしながら、過去完了形の説明もいっしょにしてしまう。生徒によっては、教えなくても、未来完了形まで理解してしまう。あとは「練習あるのみ」だから、自分の気に入った文を繰り返し何十回も言ってみることを奨める。これを守る生徒の中には、中三で英検の準一級を取ってしまう子がいる。
生徒指導において、ぼくは「基礎」の大切さを強調して、生徒には「口に出して練習する時間」を多くとる大切さを説いている。生徒が自分の耳にした文を積極的に自分から口にするようであれば、「意欲」がふくらんでいる証拠で、彼らは「自信」にあふれている。しかし、基礎がわからなくなると、英語を口にしなくなって、その生徒はやがて英語への関心を失ってしまう。
生徒の英語への興味のバロメーターとして、習った言葉を口にするかどうかをぼくの目安にしているが、「英語を口にできないのは自信のなさのあらわれ」だから、そんな生徒がぼくの授業でひとりも出ないことを目標にしている。
(バブ・ゴーデン)