■“WHADDAYA SAY”って、どんな本?
2002.5.14
ニーナ・ウエインスタイン(Nina Weinstein)著の“Whaddaya Say?”という本をご存知ですか?
同タイトルのsayを除いた「whaddyaはwhat do youもしくはwhat are youにおけるリンキング現象」とニーナは言う。
現代米語でyouがyaと短縮される点に疑問の余地はないが、残るはwhaddaがwhat
doおよびwhat areであるかどうかを検討してみたい。両語群に含まれるサウンドをとりあえずPV法によって分解しておこう。
what do …〔wh-〕〔-o-/-u-〕〔-t〕〔d-〕〔oo/oo〕
what are…〔wh-〕〔-o-/-u-〕〔-t〕〔母音のr〕
whatの‘a’は、場面しだいで短母音の〔-o-〕であったり、〔-u-〕であったりするが、上記の2つのケースではいずれも弱母音化している。
さて、消去法を重ねた結果、残ったのはwhatの‘t’とこれに続くdoとareとの比較だけになった。
ニーナはいずれのwhatも語尾音〔t〕が〔d〕化するとしているが、この〔-t〕はdoの〔d-〕と子音同士のリンキングを起こしているので、〔t〕のとき上の歯茎の裏にくっつけた舌をはじく時間がなくなったことに対して‘dd’と表記したのであろう。そしてさらに、doの語末母音の‘o’が弱音化するので‘dda’と表記している。
ついで、what areのリンキングについて言うと、areは〔母音のr〕だから、本来なら舌先を口の中に向けて巻かなければならないはずだが、次に続くyouをyaと短縮して発音することに影響されて全体の音が短くなった結果、舌先を巻く時間がなくなって、areが〔d〕化して、そのあとに弱母音がついて、whatの〔-t〕以降を‘dda’と表記したのであろうが、厳密に言うと、舌先の動き方はwhat
doの場合と少しだけ違っている。
しかし、個人差を考慮に入れると、両者はともにwhaddaと表記したほうが実戦的で、理解しやすいかもしれない。ただし、ニーナのやり方は日本語の方言をカナ表記する方法に似て、音声学的に正確さを欠くことを付け加えておく。
とまれ、ニーナの著作は個々のサウンドについて解説したものでなく、現代米語におけるリンキングの現象について述べたものである。
したがって、what do youおよびwhat are youがいずれもwhaddaのようにリンキングするという指摘こそが重要で、たとえば下記の2つの文のリンキングは次のようになっている。
What do you think? → Whaddaya think?
What are you thinking? → Whaddaya thinking?
音声上、両文はthinkとthinkingの違いしかなくなっているが、英語話者にとっては、まさにこの部分こそが大切な情報で、したがってwhaddayaは枕言葉のようなものにすぎないことがわかる。
たとえば、『CNN English Express』(朝日出版社)5月号の31ページにある“Now
what are we going to do?”という文は“Now whaddawe gonna do?”としか聞こえないし、実際にそう発音している。
英語話者は「さて/何を?/われわれは…つもりなのか?/する」という順序で考えているのだが、いってみれば「それでわたしたちどうしましょうか?」と言っているのである。
“Whaddaya Say?”はニュージャージー州のPrentice Hall, Inc.が1982年に出版した本で、わりと広く知られている刊行物だから、現在でも手に入ると思う。輸入書籍の情報に強い書店は、紀伊国屋か丸善だから、米語のリンキングに興味のある方には一読をお薦めする。