■“CNN English Express”

2002.6.14(金)

ブッシュ大統領の英語力

 米語にリンキングは欠かせないが、リンキングなしの米語もある。たとえば、政治家の演説は1語1語が非常に明瞭に発音されるが、ジョージ・ブッシュ米大統領が今年2月に来日したときの国会での演説文には、その傾向をはっきりうかがうことができる。
 「門前の小僧、習わぬ経を読む」という言葉があるが、ブッシュ大統領のケースがぴったりそれに当てはまる。息子ブッシュはおやじブッシュの演説を子守歌がわりに聞いて育ったせいか、間の取り方がうまく、文意を理解しやすい位置で区切って話すので、とても聞き取りやすい。
 ところが、全体の調子がいいだけに、小さなミスをすると目立ってしまう。小学校の国語の授業で起立して本読みするときの状態に似て、大統領になじみの薄い単語が出てくると、言い間違えたあと言い直したり、同じ単語を2度言ったり、また見なれぬ単語の前で一休みしたりする。どうやら、ブッシュさんはリハーサルがお嫌いなようで、演説はいつもブッツケ本番でこなしているようだ。
 国会での演説は10分間弱の長さで、単語数は約860語だが、1語が10字前後から成るギリシア・ラテン語型の単語が多く、大統領はこの種の用語を苦手としているので、彼にはなかなかパーフェクトな演説ができない。
 このときの演説では、wordをworldと言って、すぐに言い直したり、half-centuryを50年も多くcenturyと言って、すぐに訂正したり、miracleではどもっている。
 また、9月11日の犠牲者に愛媛県から寄付をいただいたことに感謝するあまり、especially touchを2度繰り返して言っているが、意図して言ったのか、本能的なアドリブか、原稿にそう書いてあるのかわからないが、とにかく非常に印象的な言い方になっていた。
 また、have toはhaftaと日常的な口調になったり、faith in usなどの慣用的な言い方ではリンキングしている。ほかにもまだまだ特徴的な点がいろいろあるが、本稿ではこれくらいにしておこう。
 なお、本演説は『CNN English Express』の5月号にCD付きで掲載されているので、入手するべしとお薦めしておきます。このCDは永久保存版です。
 ブッシュは母校の卒業式に招かれたとき、「自分は日本の俳句を専攻したが、先生から日本語もいいけど、もっと英語を勉強したほうがいいんではないかと言われた」と自らのCスチューデントぶりを後輩に語っていたが、彼はあきれるくらいの単語知らずである。
 ブッシュをからかった彼の失語集が何種類も出版されているが、その中から2つほど拾っておこう。

  “They have miscalculated me as a leader.”
  (Westminster, California, 9/13, 2000)

 miscalculateは<mis(誤)+calculate(計算する)>だから、この語は「誤算する」という意味だから、ここに使うのはふさわしくない。この文では「過小評価する」と言いたいわけだから、<under(下に)+estimate(見積もる)>から合成されたunderestimateを使うほうが正しい。
 大統領はunderestimateという単語を使い慣れていないらしく、再び次のような間違いをしている。

 “They misunderestimated me,”
  (Bentonville, Arkansas, 11/6, 2000)

 この文でもunderestimateが正しい。そもそもmisunderestimateなんて単語は聞いたことがないし、どうやら大統領の造語のようでもある。大統領は「俺のことを見くびってる(過小評価している)が、それは間違いだぜ」と言いたくて、underestimateにmis-という接頭辞をくっつけたのかもしれない。
 ブッシュ大統領って、ひょっとしたら、シェークスピア以来の新語造りの天才かも―。