■『一発表現300』大杉正明著

2002.7.6(土)

意味がわかればリスニングの効果倍増

 表題どおり、同書には短い300のフレーズが収録され、それを使った会話例を添えただけの一種の暗記用の本ですが、この300を覚えて、適切な場面で使えるようになったとき、ほぼ日常的な英会話がこなせるようになっています。
 「えっ、そんなおいしい話があるなら、300くらい丸暗記してしまおう」と考える人がいるかもしれませんが、おっとどっこい、そうは問屋が卸しません。英会話の世界、そんなに甘くありません。
 人それぞれ、英語学習に使える持ち時間が違っているし、現時点での英語力に個人差があるので、標準値を示すことはできませんが、大学出の人ならこの本1冊で3カ月くらい遊べるはずです。
 本とテープの両方で約3,000円ですから、1カ月の遊び賃は1,000円です。しかし、本棚に「積ん読」(?)だけなら、3,000円は捨てたも同然です。千円札を3枚、まさか川に流す人はいないと思いますが、本の買い損ねって、しょっちゅうあるんですよね。ともあれ、この本が使えるか、使えないかは、おもに利用者自身の問題ですから、買うときは自分で確かめて、責任を持てそうなら買ってください。
 さて、使い方ですが、最初は会話例をいっさい無視して、300のフレーズだけを自分向きに再編集して、苦手なフレーズは2回か3回連続して入れておくといいでしょう。
 ついで、文型の研究をあらかじめ済ませておきます。同じ構文のものをグループごとに集めて、何通りかに整理してみると、「えっ、たったこれだけしかないの!」と驚くはずです。このプロセスが最も大切で、ノウハウは……著者の大杉氏に対する越権になりかねないので、これ以上は申せません。ご自分で研究してください。
 そのあと、本を見ながら、気持を集中させて数回テープを聞きます。そのあと、車の中とか、散歩とか、通勤電車の中とか、それぞれの状況に応じて何十回も聞いてください。意味がわからなかったら、そのときは本で確かめてください。
 もう大丈夫と思ったころ、巻末の一覧表を見ながら、英→和、和→英の両方をどれくらい覚えているかをチェックします。英和はすぐにできるはずですが、和英は「なんだっけ?」ということが多々あるはずです。
 だいたい覚えたころ、300のフレーズをそらでどれくらい覚えているか、時間を定めて試してみるといいでしょう。満点をとることにこだわる必要はありません。95%もできれば上々です。
 最後に、テープで会話の例文を聞きながら、その場面を想像してみます。このプロセスも非常に重要です。本に示された日本語訳にこだわらず、こんな場面ではこのフレーズを使うんだな、ということがわかればいいのです。
 そしていよいよ、テレビのドラマや映画を見る番ですが、そのとき音声を英語モードにすると、「あっ、ここに出てきた!」という感動をしばしば味わうことになります。
 しかし、『一発表現300』が身についたとしても、じつはここは入口でしかなく、そのあと何年もかけて自分が使える表現を増やしていかないと、300だけでは実際の英会話ではほとんど役に立ちません。
 とはいうものの、この300のフレーズには米語の基本となる構文がだいたい入っているので、本当にモノにできれば、いくらでも応用がきくようになっています。この300を厳選した大杉正明氏の英語へのなみなみならぬ研究心が見えてきます。
 本書はNHK出版の発行で、初版が1997年となっています。大杉氏は序文に「大学に入ってから英会話を始めた」と述べていますが、帰国子女(バイリンガル)でない人が、社会人になってホンマモンの英語を身につけるのは大変なことです。とはいうものの、大杉氏を手本にすれば、誰にでも英語は手に届くものになります。
 そのじつ、アメリカ人やイギリス人で英語を話せない人なんていないはずで、人間の脳はどんな言葉でも理解できるよう神から天賦の能力を授けられているのです。ただし、日本語がしっかり定着していればいるほど、自分のテリトリーに英語を入れまいとして日本語脳が懸命に邪魔します。それをはねのけてバイリンガルを目指すのは容易なことではありませんが、英語ペラペラは決して夢ではありません。