■“TOEFL Strategies”

2004.6.23(水)

TOEFLの攻略に役立つ本場の対策本

 東京大学の大学院の試験(英語)にTOEFLが使われているという報告が理科二類の学生から寄せられた。TOEFLはアメリカの大学で外国人学生の英語能力を計量する入学資格のバロメーターになっているが、わが国で実施されている英検や大学入試センター試験の出題傾向と比較すると、「客観性」と「実用性」の両面において一日の長があるように思う。
 言葉は日常的に使用されるもので、TOEFLの主旨は明らかにその点に立脚して、英語圏の大学で授業を受ける学生の英語力を判定する道具として作られている。TOEFLは問題数が多いので、ほぼ実力どおりの試験結果が出るわけで、外国人学生の多い東大の大学院でも、その実効性を認めざるを得なくなったのだろう。
 そんなこんなで、書店にはTOEFL対策の問題集や攻略本が溢れることになるが、その多くは「過去問」に重点を置いた編集がなされている。試験には慣れが必要だから、過去問をこなせば成果が出るはずだが、物事は思惑どおりにいかないもので、ことTOEFLに限って言うと、受験者は戸惑ったり、やみくもに無駄な努力したり、ギブアップを余儀なくされる者も決して少なくない。
 試験では1回ごとに新しい問題が出題されるわけだから、過去問の練習だけに頼ってはいられない。なんといっても基本が大切で、基礎学力がしっかりできていて、そのうえで過去問の練習をすれば、鬼に金棒、成績はいっきに上昇する。
 TOEFL対策として、「何を、どこで、どのように、どれくらい」の英語を学ぶべきかが常に取り沙汰されるが、アメリカで出版されたTOEFL攻略本を研究してみるのもひとつの手であろう。English as a second language program の一環として制作された Eli Hinkel 著の“TOEFL Strategies”(Barron's 刊)の感想を述べておこう。
 本書は英語をひととおり学んだ人を対象に、凡ミスを少なくするための解説書だから、「TOEFLでしてはならないこと」の欄には“Do not leave any answers blank. There is no penalty for guessing.”(ヤマカンで答えても減点にならないので、解答の空欄を残さないように)などと試験慣れした日本人学生にとっては、チョー常識が提示されているが、総合的に言うと、受験者に親切な対策本と見なせる。
 TOEFLは“Written English”に重きを置いているので、本書はとくに「語義と読解力の練習」(practice for vocabulary and reading comprehension)に力を入れている。書き言葉では、いろんな分野の英文を読みこなしておく必要があるというわけだ。
 TOEFLは「英語の“語義と構造”を正しく理解しているかどうか」を問う物差しだから、文法に強い人が有利であることは間違いない。実戦的に英語を使いこなす人であっても、冠詞や前置詞の使い方が甘かったり、助動詞の使い方の基本がわかっていない人は、高得点を取れない仕組みになっている。
 本書はA4判変形で、360ページの大冊だが、解説部は約150ページだけだから、総花的な点は否めず、外観的には日本で出版されている同種の出版物と大差はない。資料的にも不足している部分が随所に見られるが、本場物だけあって、さすがに勘所をうまく押さえている。「本書に足りない部分は別の本で調べてください」ということが語らずして示されている。学習範囲を広げてくれる実用性に富む好著である。
 本書に付属するテープの発音は明瞭で、話し方がゆっくりだから、リンキングの多い話し言葉の音則を知らなくても間に合う。とはいうものの、当たり前のことだが、機能語の類が弱めに発音されるので、英語の構造がよくわからないと問題の文意を正しく汲み取れない。言語理解において、語義と構造の豊富な知識が求められることを本書は改めて示唆してくれている。
 本書を一口で評すると、英語の基礎力を持つ人がTOEFLを受けるとき、事前に目を通しておくと、問題を解く要領がつかめる対策本と言える。この1冊でTOEFLの大要が明解にわかる良書だが、残念ながら上級者向けのレーベルを貼っておこう。

(K.T)