■チャンク学習法を確立しました
2006.10.8(土)
【Q】貴社のホームページやメールマガジンに「チャンク」という言葉がたびたび出てきますが、バブ・ゴーデンさんに詳しく説明していただけませんか。
(S・T)
【A】ステーキは口の大きさに合うようにナイフで小さく切って食べますが、文の理解もそれと同じです。一語文や省略文などの短文を別にすると、英語話者が人の話を聞くとき、脳の中で英文を時間的に切り刻みますが、そのサイコロステーキにした状態を
chunk と言っています。chunk とはじつは肉やパンなどの「大きめの塊」を指しますが、アメリカの英語教育会の一部では、英語の最小パーツを「単語群」と見なして、その個々の単位を
chunk と呼んでいます。
実用英語において、意味の面からすると、英語の最小単位を単語とは言いかねます。ぼくは現在、小学校の英語授業を担当する先生方に英語の教え方を教えていますが、最も手を焼いたのは、彼らが「英語の最小単位=単語」と信じていたことでした。週1回のレッスンを半年間続けて、ようやく英語の最小単位が単語でないことをなんとか理解していただきました。
音声面の最小単位は1文字か2文字で表わす「単音」で、1音節はたいてい3つの音からできています。たとえば、can
は〔c〕と〔n〕という母音に挟まれた母音の〔-a-〕を併せて3つの音から成り立っています。また、not
は〔-o-〕という母音が〔n〕と〔t〕という2つの子音に挟まれて、やはり3つの音から成り立ちます。
そして can not と言うとき、丁寧に cannot と言う場面もありますが、それは「否定」状態をはっきりさせて、can
と間違えないようにするためです。しかし、ふつうの会話では、たいてい誰もが
can't という短縮形で言います。ところが、語尾音の〔n〕と〔t〕はともに舌先を上の歯茎の裏にくっつけて出す音ですから、舌を動かす時間的・運動的余裕がないため、後ろの〔t〕は聞えてしまうか、残っても「側音」の〔l〕に似た音になります。
したがって、相手が can と言ったのか、それとも can't と言ったのか、英語話者にも聞き取れないことはたびたびあります。ただし、“I
can't / take it / anymore.”と3つのチャンクで言う例なら、anymore の登場によって、否定の
can't であったことが認識できます。
つまり、音もチャンクでとらえているわけで、英語は単語と単語がつながるという理屈はその種の現象にほかなりません。英語の単音はわずか45音しかありませんが、パーツが少ないだけに、「連音」では柔軟性が高くなって、別の音に変化したり、消えたりします。チャンク状態の英語の音声は、特有のリズムを生じるからこそ、単音が正しく発音できないと連音を理解できない、とぼくは口をすっぱくして主張し続けています。
たとえば‘I am not going to’という<主語+ be 動詞+ not +擬似助動詞>型のチャンクは、多くの人が‘I'm
no' gonna’(アムノッゴナ)のように発音します。すなわち、I'm は「私の状態」で、これを
not で「否定」し、going to で「するつもり」という意志を表わしています。ぼくたち英語話者にとっての‘I'm
no' gonna’は、まさしく口に入る大きさのチャンクなのです。going to が gonna
となる説明は長くなるのでやめますが、とにかくそういうことです。
以上の理由からして、chunk を最小単位とする学び方を採用すれば、話し方がより英語らしくなるので、相手に正しく聞き取ってもらえるし、やがて自分でも聞き取れるようにもなります。チャンク化された英語のリズムを正しく扱えるようになれば、あとは使えるチャンクの数を増やせば英語はどんどん上達します。
ぼくは日本人がいかにすれば英語を獲得できるかという課題について、20年間近く試行錯誤を繰り返してきました。当初からチャンク的な手法のアイディアを駆使してきましたが、新日本教育図書の協力のおかげでようやくチャンク学習法を確立しました。チャンク学習法以外に日本人が英語の話し言葉を身につける手段をぼくはいまだ見い出せていません。
(バブ・ゴーデン)