■英語話者は英解・英作をチャンクでこなす
2007.2.10(土)
「音声→単語→チャンク(単語群)」の関係は、「原子→分子→結晶」という物質が形成される段階に喩えるとイメージしやすいかもしれません。
英語には45種(子音27・母音18)の音声があって、これらを組み合わせて50万語を超える英単語が作られています。単語にはそれぞれ個別の意味が含まれるほか、文法上の働きの違いによって、英単語は「動詞」「助動詞」「名詞」「代名詞」「決定詞」「形容詞」「副詞」「前置詞」「接続詞」「間投詞」という10種類の「品詞」に分類できます。
当初の単語は自然発生的に生じ、のちに人工的に追加されましたが、いずれにしろ、ほとんど恣意的に作られたもので、文法は意識されずに登場しています。一方、品詞の分類は、文法学者による分析結果の所産にほかならず、英語では「1単語=1品詞」の関係にとどまらず、複数の品詞を持つ語のほうが主役を務めます。
英語話者が英語を使うとき、品詞が何であるかを考える人はまずいません。言葉のできる人には、文法知識は不必要とさえ言えます。人は生まれてこのかた、おもに五感を通して母国語の土台を築き、そのあと学校教育においてそれに補強します。
しかし、非英語話者の場合、音声の基礎はもとより、単語力も作文力もないわけだから、英文法を知ることが英語力の向上に益することが多々あります。ところが、わが国で出版された英文法書の大半は英語の品詞を8種としています。この分類はラテン語の文法に基づいた方法を踏襲する考え方で、矛盾の多いことがあれこれ指摘されています。
近年、さすがにイギリスの英文法学者の一部が改善に乗り出し、英語に特徴的な「冠詞」の性格に類似した語を代名詞・形容詞・副詞から取り出して「決定詞」(determiner)とする決断をしました。しかし、いまだに「助動詞」(auxiliary
verb)の特異性には手こずり、古い文法理論にしがみついたままでいます。
そもそも英語のできる人にとっては、英文法の理屈はどうでもいいことで、インターネット上だけのことですが、アメリカには目に止まる研究がほとんど見当たりません。英文法はむしろ日本人学者のほうが掘り下げて研究しています。当社は当社と関係を持つ英語話者の執筆陣に時間をかけて品詞分類を理解してもらっています。
10品詞の性質を理解できたとしても、英語に通暁できるわけではありません。現代英語はよくできた言語で、50万語の英単語のどれとどれをどのような順序で結び付けるかというルールがばっちり決まっていて、英語話者はその法則を自家薬籠中のものにしているから、立て板に水のごとく英語を話せるのです。
英語は印欧語の仲間だから、語形変化によって細かな意味を決定する「屈折語」の特徴を残すものの、異民族との交流が多かったことから、単語の並び方で意味が決まる中国語のような「孤立語」の性格を含んで「語順方式」の言語になりました。したがって、英語話者は語順を決めるにさいして、最初に文ありきではなく、チャンクの単位ごとに、こまぎれに言葉を並べて文を作ります。
なお、日本語は助詞のテニオハで意味を決定する「膠着語」ですが、英語の前置詞や副詞の使い方はそれと似た面があるので、ここでは
with、without、within を取り上げて前置詞句を作る例文をいくつか見ておきます。
(1) Cover your eyes / with your hands.
(2) I'll be / with you / in a minute.
(3) Make yourself / comfortable / with a pleasant pillow.
(4) Can I / have a silk nightgown / with rosebuds / on it?
(5) You don't / get along / with your parents, / do you?
(6) What's / new / with you, / darling?
(7) The house has been / empty / without you.
(8) We'll / leave / within the quarter hour.
(1)…“cover your eyes”はVO型で、これに「両手で」という意味の前置詞句による副詞類が添えられた文です。
(2)…“I'll be”は I'm を助動詞 will を使って助動詞文に変えたチャンクです。“in
a minute”は前置詞句です。
(3)…“make yourself / comfortable”は yourself が「快適な」状態になるので、VOC型と見なしてけっこうです。この文は夜行の交通
機関での枕売りの売り声です。
(4)…“can I”は自分の可能性を問う助動詞文の疑問形で、“have a silk nightgown”はVO型です。そのあと、前置詞句が2つ続いています。
(5)…“you don't”は do 助動詞による助動詞文で、行為語は句動詞“get along”を使っています。
(6)…“what's”は I'm と同じ<S+ be 動詞>型で、この文は挨拶言葉です。darling
は間投詞です。間投詞には感情が含まれ、話者の気持が示される大切な語です。
(7)…“the house has been”は the house is を完了形にした文で、「あなたがいないと家の中がからっぽ」の意を
the house を主語にして寂しさを強調しています。
(8)…“we'll ”は will を用いた助動詞文で、「15分以内に出発する」ことを相手に告げる命令調の文です。
with は前置詞の中で第5位の使用頻度数で、ほとんど前置詞句として使われるので、これを用いるチャンクに慣れるだけで英訳・英作はうんと楽になります。決定詞は(1)(5)の
your、(2)(3)(4)の a、(7)(8)の the がそれで、英語は前置詞句を理解する以前に、これらの使い方に習熟することが求められます。