■「チャンク」と「文の要素」の間柄
2007.2.16(金)
前回「発音を原子、単語を分子、チャンク(単語群)を結晶」に喩えましたが、母国語において、ヒトは脳内にこれらを構造的に潜在化させています。目を閉じたままで、ピアニストの指は鍵盤を正確にたどります。タイピストは原稿だけを見て、猛烈なスピードで指先をキーボード上に走らせます。言葉はそれと同じです。
昨今、テレビの普及によって、母国語の統一が進んでいるとは言え、各地域にはそれぞれの方言が残り、年代によっても話す言葉に多少のずれがあり、職業ごとに使われる表現にも差が生じ、とどのつまり、言語は個人単位で微妙な違いを示します。
しかし、言語はコミュニケーションの道具だから、他人に通じなければ役に立たないわけで、それゆえにどの言語も共通項を持つ必要性を求められ、そのことが標準的な「発音→単語→チャンク」の構造を築きます。
英語のチャンクは「動詞」「be 動詞」「主語」「目的語」「補語」「副詞類」「助動詞」「擬似助動詞」「接続詞類」「間投詞」という10種類の「文の要素」を単位として形成され、どんな英文もこの10要素だけで分析できます。説明の便宜上、これらを下記の略称に代えておきます。
(1) V(Verb)(2) be V(be-Verb)
(3) S(Subject)(4) O(Object)
(5) C(Complement)(6) A(Adverbial)
(7) aV(Auxiliary Verb)(8) psV(Pseudo Auxiliary Verb)
(9) J(conjunctive)(10) I(Interjection)
わが国の学校現場に見られる現行の英文法は、5文型だけで英文のすべてを説明しようとするものですが、そこでは文の要素をS・V・O・Cの4種しか使わないため、文法上のさまざまな別の約束事を理解する必要に迫られ、英語学習に興味を失う子供たちが数多く出てきます。
そこで、英文を形のうえから大別すると、「動詞文」と「be 動詞文」の2種類に分けられます。前者は“Take
your time.”(時間をかけてもいいよ)のように大半が「動作」を述べる文を作ります。後者は“I'm
/ in a hurry.”(私は急いでいる)などの「状態」を表わす文になります。英語にはこの2種類の文しかないとさえ言えます。
ところが、動詞文は動作動詞だけを使い、be 動詞文は be 動詞だけを用いて文を作れる、と定義できればいいのですが、言語では論理よりも感覚が優先するため、“I
have black eyes.”(私の目は黒い)のように、動詞文であるにもかかわらず、have
は「持っている」状態を示します。have は動作の「持つ」ではないので、完了形の助動詞としても使える機能を有します。
上記の2種類の文型にこだわると、進行形も受身形も be 動詞文に含まれるので、文法の理屈がとても簡単になります。実際、英語話者は“I'm
/ coming.”や“I'm / surprised.”などは状態文として捉えます。現在分詞や過去分詞の多くが形容詞化していることでその意識を理解できるはずです。
5文型における英文法の最大の不備は、be 動詞の位置づけが不安定なことですが、それにもまして副詞類への定義がないことは大問題です。近年の英国の英文法書には“The
adverbial is a word or phrase that provides further information, usually
about the verb.”といった定義がなされ、「副詞」「前置詞句」「名詞句」などをAの仲間に掲げています。わが国の英語教育では、副詞類に一刻も早く文の要素としての立場を与えるべきでしょう。
また、中学校の英語教科書は助動詞をできるだけ避けようにしていますが、これらは主語の気持を表わす言葉で、英語話者は<主語+助動詞>のセットをチャンク化して多用します。英文の大半がこの形を含むので、学校ではもっと早い段階で助動詞をたくさん教える必要があります。
擬似助動詞も助動詞と同じくらい数多く使用するチャンクを作る要素で、本場の英文法書には
resembling auxiliary verb と題して“There are a number of other verbs and
verb phrases that behave like auxiliary verbs.”などと紹介されています。
接続詞類は接続詞や関係詞の類で、文を連結させるさいになくてはならない言葉です。そして間投詞は、人間が言葉を覚え始めたときに最初に発した言葉で、いうなれば感情をもろに表わす言葉だから、今後もやはり大切に使い続けられるはずです。
以上、チャンクを理解するための文の要素について説明しましたが、実際のチャンクはたとえば“I'll
〜 .”(I will)の<主語+助動詞>(S+aV型)とか、“I'm gonna 〜 .”(I
am going to)などのような<主語+擬似助動詞>(S+psV)型のセットになるので、頻度の高いものを繰り返し練習して、潜在意識下に叩き込まないかぎり、英語を自在に使いこなすことはできません。