■オノマトペで知る英語音(5)
2008.2.15(金)
摩擦音〔th〕は「衝突音」を作る
擬声音における語頭の摩擦無声音〔th〕は、一義的には、おもに「衝突音」を表わし、ときには「摩擦音」を示します。そして二義的には、語尾音によって擬声音としての大まかな性格づけをして、さらに語中の母音または子音しだいで具体的に何の音かが決定されます。
たとえば thak、thuk、thunk、thutch などの擬声音における語尾が〔k〕や〔tch=ch〕の場合、ナイフや斧を使ったときに生じる「グサッ」「ブスッ」「ズブリ」といった鋭角的な音を表わします。したがって、矢が当たったときにも、この種の擬音声を使います。thunk
はまた、物がぶつかるときの打撃音にも使います。
thock や thonk は、語尾音の〔ck=k〕〔nk=ng〕とあいまって、語中の短母音が口を大きく開けて発音する〔-o-〕という音声であることから、「ガツン」「ゴツン」などの重くて鈍い衝突音を示します。
thud と thump も「ドシン」「ドカン」「ゴツン」といった鈍重な音に相当します。すなわち、thud
は物体が地上に落下したときなどに出る衝撃音で、thump は象やゴジラなどの足音であったり、ゴリラやキングコングが胸を叩く音などに用います。語中音〔-u-〕の鈍い響きもさることながら、語尾音の〔d〕または子音ブレンド〔mp〕のイメージが強いからでしょう。
thwonk、thwam、thwop、thwack、thwok、thwhap などの擬声音では、語中の半母音的な〔w〕や〔wh〕が影響して「バシーン」「グワ―ン」「ピシャリ」などの強烈な打撃音を表わします。
thoo は2音しかありませんが、後半の〔oo〕が長母音のため、狭い出口から水が出てくる「シュー」とか「バシュ―」といった音声を示します。
語頭ブレンドの〔thr〕は、分解すると〔th〕+〔r〕ですが、舌先が口の奥に巻き込まれる〔r〕で少しブレーキがかかって、音の速度が遅くなる印象があります。たとえば、thrum
は「ボロンボロン」と弦楽器を鳴らす音になったり、雨だれの「ポツリポツリ」という断続的な音を表現します。throb
は心臓の「ドキドキ」という鼓動音を示したり、頭痛のときの「ズキズキ」であったり、エンジンの「ブルブル」という音などを表わします。
無声音の〔th〕は、歯の間に舌先を挟んで音を出すので、音声学では「歯擦音」とも言います。〔th〕は英語に特有な子音で、日本語にはこの種の類似音はありません。口を3〜4ミリくらい開けて、上下の歯の隙き間に舌先を1ミリくらい差し込み、音を出したら、素早く舌先を口の中に引っ込めます。肺から出てきた空気が舌と歯でせき止められますが、密閉状態が不完全なため、ガスもれに喩えられる摩擦音が口から出てきます。舌を歯の間に挟まないと、日本語のサ行音になりがちです。
小学生低学年以下の子供に〔th〕の音の出し方を教えると、わずか15秒間程度で発音できるようになりますが、大人はやや大袈裟に歯に舌を挟むほうがいいでしょう。
なお、「雷」を意味する thunder は、純粋な擬声音ではありませんが、語頭音〔th〕に続く語中音の短母音〔-u-〕と鼻音〔n〕の響きが加わり、さらに語尾に‘er’が添えられるため、「ゴロゴロ」という音が聞こえてきそうです。英語は非常に音声に敏感な言語と言えます。