■chunk を使って考える to 不定詞

2006.1.7(土)

 年始早々、急いでお伝えしたい情報がいくつかあります。優先順位(priority)第1位はNHK教育テレビの英語番組『ハートで感じる英文法』の視聴のお薦めで、第2弾の1回目が一昨日(木)の午後11時10分〜30分に放映されました。われわれはNHKの英語教育番組を軽視しすぎて、迂闊にも第1弾が放映済みであることを知りませんでした。
 当社の上司が昨年暮の深夜番組で再放送を見たとのことで、そのおり第2弾が今年の1月5日から始まることを知って、「とにかく見てみろ!」と命令されました。第1回は「to 不定詞」で、当社が約25年前から主張しつづけてきたのと似たような内容がブラウン管から流れて、「やれやれ」と胸のつかえが降りたような気分になりました。
 大西泰斗講師は「to 不定詞における名詞的用法・形容詞用法・副詞用法の面倒な理屈にとらわれず、to 不定詞以下は足りない情報を付け加える形式にすぎないと単純に考えるべき」といった意味の話をされていました。聞きもらした点をテキストで確かめようとして、さっそく書店に申し込んだところ、予想以上の超人気で、その店での売り切れはもとより、チェーン店のどの店も売り切れていて、NHKに問い合わせたら増刷中だから1月中旬にならないと手に入らないと告げられました。
 to 不定詞と that 構文の置き換え例は辞書のいたる場面に示されており、to 不定詞の to が「つなぎの言葉」にほかならないことは明白です。また、to 不定詞の to が前置詞の to と関係が深いことは、たしか大津栄一郎著の『英語の感覚(上・下)』(岩波新書)に解説されていたと記憶しています。
 ベストセラーになった大津先生の名著は、約100年前の英国人のオニオンズ(C. T. Onions)による英文法にがんじがらめにされた日本人の一部の英語学習者の目を覚ましました。大津・大西両氏の共通の視点は「英語(=言語)は感覚でとらえる」という指摘で、われわれも百パーセント同意します。話し言葉はおもに脳の感性部で処理されており、実際に英語を使う場面でいちいち文法など考えている暇などないからです。
 文法は実際に使われている言葉の理屈づけにすぎませんが、人間の言語には例外なく「文構造」があって、成人後に第二言語として外国語を学習するとき、文法知識は大いに役立ちます。大西講師はたぶん「わが国で横行している英文法は、学習者を混乱させるだけのものでしかなく、英語話者が感じている文のシステムを身につければ、もっと簡単に英語を使えるようになる」と言いたいのだと思います。
 「文法」という用語は、わが国で神聖化されているので、「感覚的な文法」という概念を提示して、大西氏は「従来の英文法は蔵にしまいましょう」と婉曲に視聴者に語りかけているのだと推測します。これから3カ月間、毎週1回20分間ですから、絶対に見てください。多くの英語番組は見るだけ時間のムダですが、大西理論は得になることがいっぱいあっても、損になることは何ひとつないはずです。
 すべての英単語には「品詞」としての役割があり、それは英文法を考えるときの大切な土台になりますが、英会話(英作文も)は単語群で捉えたほうが習得しやすいと言えます。実際、英語話者は one of them や in the garden などの句を chunk の形で頭の中から取り出します。chunk とは「(食べ物や木材などの)大きい塊」「厚切り」を意味する語です。chunk について学界の見解は統一されていませんが、文法用語では「ひとまとまりの意味を形成する単語群」を指します。では、to 不定詞を含む2つの chunk の例を見ておきましょう。近いうちに会う予定の人にたまたま出会ったときのフレーズです。

(a) I'm glad / to see you / right now.
(b) I'm / glad / to / see you / right now.

 (a)は実戦的な chunk の考え方で、英語話者の大半はたぶんこの種の認識をしているようです。(b)は当社が「文の要素」を説明するときに使う chunk です。

  I'm     主語+be 動詞(S+be V)
  glad    補語(C)
  to     連結語(J)=Connective
  see you   動詞+目的語(V+O)
  right now  副詞類(A)=Adveibial

 このフレーズの文の要素の並びは<S+be V+C+J+V+O+A>となりますが、ふだんの練習では(a)の chunk を使うべきです。このほか「助動詞」(aV=Auxiliary Verb)、want to(wanna)などの「助動詞もどき」(psV=pseudo-auxiliary Verb)、not に代表される「否定語」(N=Negative)、「間投詞」(I=Interjection)という4種の文の要素があります。併せて11種の文の要素で英文に考えていけば、句や節など厄介な文法はお蔵入りできます。S・V・O・Cの4要素だけで英文の構造はとても説明しきれません。

(編集部)