■明後日は大学入試センター試験−−リスニング・テストの前に

2006.1.20(金)

 医者は患者に診断と治療を提供して、その見返りに収入を得ています。医師の正確な処置は患者を幸せにしますが、手術に失敗すると患者の命を奪うことがあります。
 だから、プロフェッショナルな医師は常に患者本位に考えますが、岡山県の小児心臓外科の佐野俊二医師がNHKの『プロフェッショナル』という第1回目の番組で紹介されました。『プロジェクトX』のあと番組とのことですが、こんどのシリーズのほうが前回の作品を凌駕していそうです。
 NHKの肩を持つ気はさらさらありませんが、この1本だけで1カ月分の聴取料に相当する価値を感じさせるほど番組を見て心を洗われる内容がありました。海老沢会長を辞めさせて以来、NHKはたしかに変わりつつあるようで、スタッフの意気ごみが伝わってくる作品が多くなった気がします。
 番組の後半に佐野医師の助手を8年間勤めた若手に初めて手術をまかせるシーンがあって、責任は主任医師である自分にすべて振りかかってくるので、自らメスを握ったほうがうんと楽で、人を育てることは大変に難しいと佐野医師は述べておられました。
 イギリスの教育学者のウイリアム・アーサー・ワードは「凡庸な教師はしゃべるだけ。ちょっとましな教師は生徒に理解させようと努める。優秀な教師は自分でやってみせる。真に優れた教師は生徒の心に火を点す」と書いています。NHKの『わくわく授業』という番組で有田和正という70歳の退職教師による小学校の社会科授業が放映されましたが、地図の見方から始めて、気候・農業・歴史などを短い時間の中で生徒の自発性を引き出す有田先生の指導ぶりにも感動させられました。
 江戸時代の山口県は防長二州から成っていて、長州の萩は幕末に吉田松陰という大教育者を輩出しています。松陰先生は夜陰にまぎれて伝馬舟を漕いで国禁を破ってアメリカの黒船に乗船し、その罪を問われて、野山獄につながれます。獄では囚人たちがそれぞれ得意科目を教える側に立ち、ほかの囚人は生徒になるという人間関係を築きました。
 獄から解放された松陰先生は、松下村塾という学習塾を開校しますが、そこでの学習は「自習」と生徒同士が教えあいながらの「ディスカッション」が主体で、講義はほとんど行なっていません。生徒の高杉晋作は20歳のとき『対策』と題して「わが国はひとまず西洋から学んで国力をつけ、しかるのちに対等な関係を構築せよ」と論理立てしたレポートを発表しています。当社はもちろん松陰先生の本も出版しています。
 当社の英語教材は、松陰先生の教育手法をそっくりいただいて、(1)自習できること(2)仲間と競争しながら共に学べること(3)自分の言葉で発表できる能力を築けること、という3つの学習法を盛り込んで、それをテキストに反映させる努力を続けています。
 今年から大学入試センター試験にリスニングが取り入れられるとのことで、その相談がいろいろ寄せられます。教材屋は各社ともその対策用にさまざまな商品を発売しています。たとえば、録音された英語のフレーズの音声の速度を自在に変更できて、遅いものから徐々に慣れていくという器具が発売されています。わが国の科学技術力をもってすれば、どんな機器でも作れますが、英会話は人が自分の能力として身につけるものゆえ、自らで学ぶしかなく、残念ながら何かにすがって得られるものではありません。効果がないとは申しませんが、現在のリスニング対策はゴルフクラブの正しい持ち方を示さずに、いきなりドライバーを持たせてボールを打たせているのと同じです。
 リスニングの能力を育てるのに、ただ聞くだけでは時間がかかりすぎます。「門前の小僧、習わぬ経を詠む」という言葉がありますが、その小僧は経文の意味を誰かにそっと教えてもらいながら、きっと何千回も口に出してそれを唱えたはずです。小さな子供は何百回も耳にした言葉を自分の口から出す段階でそれを身につけます。
 英語の話し言葉は、まず45種の単音の発音を正しく言えることから始めないと一歩も前進できません。単音を学習するうちに、おのずと連音のルールがわかってきて、地道な音声学習を積み上げていくうちに、気づいたら英語話者と同じ発音で話し、しかも彼らの話す速度に近い速さで話せるようになった自分がいるはずです。
 人は話すことによって、そのメッセージを自分の脳で処理しながら、わが声を耳にできるので、常に自己の内部で言葉がフィードバックされ、その一連の行為が言語能力を高めていきます。言語はスポーツに似ています。技術を獲得して自分のものに作り上げる以外に習得への秘策はありません。
 プロという人種は常に基礎を最も大切にしています。基礎を学ばないと応用がきかないので、学習効果が悪くなります。基礎学習はできるだけ早く始めるべきですが、PV法は高一から開始しても、大学入試センター試験に間に合うだけでなく、TOEICやTOEFLにも大いに役立ちます。
 明後日は大学入試センター試験です。現在、当社は対策データを持ち合わせませんが、来週にはすべて詳細が判明します。失敗した人には来年の対策をできるだけ早くお伝えします。
(K・T)