■通訳機にどこまでの能力があるか?
2007.9.7(金)
A:北京オリンピックの開幕日を目途に「携帯用の和英・英和通 訳機」を売り出す計画があるとテレビで報道してたけど、どの程度の能力があるのかしら?
B:そのニュースでは、通訳機はどんな「テスト会話」をしてたの?
A:きちんと話す例も紹介してたけど、ナントカマメが入力されてないので答えられないという失敗例もあったけど……。
C:なるほど、成功例と失敗例−−たぶん本質を短く伝えるための新商品紹介での基本パターンを使ったヤラセだろうが、通 訳機の能力はよく見えてるね。要するに、通訳機はコンピューターだから、入力されたものなら出力できるが、入力されてないものは出力できないことを示したにすぎないね。
D:コンピューター用語にGIGO、つまり garbage in, garbage
out(ガラクタを入れればガラクタが出てくる)という表現があるのは知ってるだろう。
A:聞いたことはあるけど……。
D:人間の場合、入力したデータを確実に出力できるとは限らない。人はよく忘れるし、体調が悪いと試験に落っこちたりするけど、気分が良ければ150%の能力を出すこともあるからね。コンピューターは絶対に忘れないけど、その反面 、入力していないものは絶対に出力してくれない。
C:間違ったデータであっても、人間は誰に教わらなくても正しく修正できるし、コンピューターのように手順をいちいち踏まなくても一瞬に正しい答を発見できるし、不十分な情報をつなぎ合わせることもできるけど、その逆に、とんでもない間違いをすることもあるからね。人の脳は自在性が豊かなだけに、コンピューターなら絶対に間違わないことを簡単にへまするからね。
B:和英辞書はほぼ完成品だから、和英翻訳機はどんどん能力を上げていくと思うけど、通 訳機はどうなんだろうね。
A:通訳機はまだ使えそうにないの?
D:話し言葉と書き言葉とでは、基本単位である発音と文字の違いが大きなハンディキャップになるだろう。話し言葉では、発音がアナログ的だけでなく、語順をかなり自由に変えて話すし、単語だって短縮して使ったりするんで、そういった尨大なデータをコンピューターに入力するには、まだまだ時間がかかると思うよ。一方、書き言葉には制約が多いから、組立て方が基本に近い文を翻訳する場合なら、日→英、英→日のどちらであれ、いずれドラフト(下書き)はすべて翻訳機にまかせる時代が来ると思うし、もう来てるのかなあ。しかし、英語の話し言葉には単語間のスペースがないから、仮に音則の基本形をすべて入力できたとしても、個人差をどこまで吸収できるか、まだ見通 しすら立っていないんじゃないの。
C:日本語の五十音は母音止めだから、音声を整理しやすいし、出力側の英語を標準語に設定すれば、日→英の通 訳機は早い段階で実用化できるかもしれない、とぼくは展望している。でも、英語の発音の個人差を整理するとなると、まだずいぶん手間暇がかかるだろう。和英の通 訳機は簡単に実用化できないと思うよ。
D:チェスの名人はすでに何年か前にコンピューターに破れたけど、将棋のソフトはかなり強くなっているとはいっても、まだプロに勝てないからね。チェスも、将棋も、相手の王様を詰めるゲームという点で本質的なルールは似てるけど、変化は将棋のほうが限りなく何十倍も多いからね。チェスはそもそも8×8=64マスしかなくて、死んだ駒を再び使うことができないけど、将棋は9×9=81マスで、相手から取った駒を再利用できるんで、めちゃくちゃに変化の多いデータ量 になるんだね。発音だけで言うと、英語が将棋級で、日本語はチェス級じゃあないかな。
A:人間の通訳もピンからキリまであって、日常語しか訳せない者もいれば、専門分野の通 訳をできる者もいるのよね。
B:入量データが貧弱な通訳さんはたしかにいるわね。
D:宇宙飛行士の全員が自由自在に英語をこなすことでわかるように、相手と意思を完全に通 じ合わせるには、間に通訳を入れては駄目ということだろう。
A:じゃあ、通訳機はどう使えばいいの?
B:英語表現は難しいから、通訳機の助けを借りるくらいの気持で使えばいいんじゃないかしら。通 訳機に頼りすぎるのは問題だけど、よちよち歩きのうちはお手伝いしてもらうつもりで付き合うのはどうかしら?
C:和英通訳機であれ何であれ、コンピューターを使いこなすには、やっぱり英語の基礎をしっかり勉強しておかなければ使えないということだろう。
B:コンピューターが何かしてくれるってことはないのよ。それって、パソコンを使える人と使えない人がいることでわかるんじゃない?
A:そおっか、通訳機も使う人間の能力しだいということか!
B:「替え玉になってもらいたい願望」を捨てきれない人は、まがい物でもきっと欲しがるんじゃない?
D:人間とコンピューターの役割は、おのずと違っているということだね。2007年の常識ではね−−。
(雑談は延々と続く)