■趣味の英語と仕事の英語の違い
2007.10.19(金)
Dear Miss M.
南アフリカからやってきた Afrikaner(ヨーロッパ系の白人)たちへの通訳、ご苦労さまでした。しかもボランティアで!
Afrikaner の多くは Boer(オランダ系の南アフリカ移住者の子孫)で、Afrikaans(大まかに言うと、アフリカーンズはオランダ語と英語の混成語で、ドイツ語や現地語を振りかけたような言葉)が母語だから、たいていの人がオランダ語はもちろん、ドイツ語と英語を話す4カ国語話者です。もちろん、彼ら同士はアフリカーンズで交流しています。
彼らの英語は癖のある発音で、とくに生粋の英語話者(英・米・豪・加人など)が話すリズムとかなり違うので、私はいつも問い返しています。使用する単語もしばしば一般的ではありません。たとえば、車の運転をしている私に対して「chauffeur(driver)をしてくれてありがとう」などと、しゃれたつもりかどうか、わざわざフランス語系の単語を持ち出してくるなど、知らない言葉がときどき登場します。文法も完全に正しいとは言えず、意味のかたまりを並べて話してきます。いわゆるアフリカーンズ系のチャンク方式の組立て英語だけど、立て板に水のように言葉を連射する英米人に比べると日本人にはわかりよいような気がしますが、あなたはどんな印象を持ちましたか?
あなたは1年間半のオーストラリア留学で、日常会話はそこそここなせるので、彼らの目的地である鯉屋に到着したあと、彼らが鯉選びをしている間、通訳はあなたひとりにまかせて、私は机を借りてそこで別の仕事をさせていただきました。
したがって、私とあなたが接触できたのは車中だけでしたが、あなたの英語力を試すため、ちょっと意地悪させていただきました。わが家に立ち寄る途中、「私がきょうは家内の休息日だから、池の鯉を見てもかまわないけど、彼女には行くことを知らせてないので……“She's not decent.”」という表現をして、あなたの反応をうかがいました。
英米人は decent という語を比較的よく使います。decent の原義は「まともな」ですが、私が使った内容は「私のワイフは(きょう)化粧していないし、ふだん着のままだから、あなた方には会えませんよ」という言外の意味を含んでいますが、彼らはすぐにその状況を理解しました。私は decent の使い方を試したつもりですが、decent という単語そのものを知らなかったので、ちょっと驚きました。たしかにあなたが話してくれたとおり、海外に留学している英文科(もしくは出身)の方はなかなか口から言葉が出ませんが、いったん話すコツをつかむと、あとは単語力があるので、たちまち力量を発揮します。
きちんとした英語、ビジネスに役立つ英語を使えるようになるには、あらゆる種類の英語を知らなければなりません。日常会話ができる程度の英語遣いなら、いまの日本には掃いて捨てるほどいるし、今後はさらに溢れるでしょう。
趣味で英語を楽しんでいる人には、何も申す言葉はありません。ボランティアなら大した英語力は要りませんが、お金をいただくプロになるには猛勉強が求められます。単語は少なくとも5万語くらいに使いこなせなければ仕事になりません。通
訳とは、じつは話し手以上の知識を必要とする職業です。通訳者は非常に高い技術を求められるわりには勘定の合わない仕事だから、言葉が好きな人でないと務まりません。
(Sincerely yours, Shuji Fujita)