■メルライン・フライダとの編集の舞台裏

2007.12.22(土)

 ほぼ1年ぶりに沖縄を訪れた。メルライン・フライダの『英単語マニア』「パート2」の内容を2年間強かけて熟成したあと、「ドラフト原稿の作成」に取り掛かり、その作業が峠を越えたからである。さて、いよいよ「校閲から校正に向けての作業」が佳境に入ってきたが、これまでの編集作業の経過を大雑把に紹介しておこう。

1、「語根」およびそれぞれの語根からの派生「単語」の抽出。−−当社側

2、抽出した語根および単語をメルラインと当社の打合せのテーブルに載せ、検討を加えたうえで、さらなる取捨選択を追加して、そのあと本書に取り上げる可能性のあるすべての単語を整理して、そのリストを作成。−−双方

3、全単語の全語源(接頭辞・語根・接尾辞)についての調査・研究。−−メル側

4、リストアップされた全単語の訳語をできるだけ多く収集。−−当社側

5、単語の語源および英語による語義解説を列挙した資料を作成。−−メル側

6、メルと当社が対面して、その1語ずつの解説を録音するが、そのおり不明・疑問な点を私が質問。−−双方

7、録音されたテープを何度も(多い場合は1語根に10回以上)聞いて、不要な部分を削除したり、話された順序を並べ替えるなどして、読者にわかりやすいような論理立てをして、「語根ごとに整理したテープ」を作成。−−当社側

8、整理済みのテープの内容をノートに箇条書き。−−当社側

9、箇条書きされた内容に照らして、取り上げる可能性のある英単語に該当するラテン語を抽出して、羅日辞典から訳語を抜き出すほか、語根がギリシア語またはフランス語、あるいはその他の言語に由来する場合も、それぞれの訳語を併記。−−当社側

10、英単語とそれに該当するラテン語との比較一覧表を作成。−−当社側

11、原稿作成を担当する私が整理済みのテープを何度も聞いた(車の運転中など)うえで、箇条書きされたノートにコメントを書き込む。−−当社側

12、筋立てに従って、私が文章化したあと、何度か推敲したあとの最初のドラフト原稿をeメールでメルに送付。−−当社側

13、ドラフト原稿の内容を確認。−−メル側

14、メルと当社が対面して、再びテープに録音しながら読み合わせ校閲。−−双方

 現在、この段階を迎えているが、メルはほんのわずかでも疑念を抱くと、校閲中に語源の再調査を始める。1単語を調べるだけに、ときにはパソコン&書籍に向かう時間が1時間を超えることも稀ではない。そして、1つの語根に関係する全単語の調べを完了したあと、ドラフト原稿の削除・訂正・補完のための解説を始めるが、そのときメルは古代のギリシア人やローマ人に変身したり、あるいはタイムマシンに乗ったかのごとくドイツやカルタゴの地に立ったりする。
 たとえば、September(9月)はラテン語の septem(7)に由来する説明だけにとどまらず、メルは Julius Caesar(ジュリアス・シーザー)の気分に浸って、2千年以上も前の改暦の事情について、その経過を自らの経験のように語る。また、マルチン・ルターが95カ条の提題を教会の扉に貼り出すシーンが目に浮かぶと言って、自分の村の出来事のように話す。
 そのとき、私は自分の胸中に向かって、念仏を唱えるがごとく“Patience”(辛抱)という言葉を繰り返すが、最終的には私自身がこれまで何かで読んで知っていたつもりの知識が間違っていることに気付かされて愕然とする。孫引きの危うさを一再ならず思い知らされた沖縄での4日間であった。今後の作業は、およそ次のような段階に突入する。

15、校閲用として録音したテープの不要部分(メルは何かを調べるとき、呟いたり、無言の時間が多い)をダビングしながら削除などして、改めて「語根別の校閲用テープ」を作成。−−当社側

16、メルの指示に従って、私がドラフト原稿をリライトして、何度かの推敲を重ねたあと、2回目のドラフト原稿としてeメールでメルに送付。−−当社側

17、2回目の読み合わせ時点では、ほぼ半分くらいをメルが了承する。−−双方

18、残り半分は再度15〜17の作業を繰り返しながらの原稿作成となる。−−当社→双方

19、メルから責了を受けたあと、固有名詞や年代などの再校閲、読者の誤読を招かないための表現の構成、漢字・送り仮名・数字・記号などの表記統一など、出版物に付き物の編集作業と併行して、複数回の校正がある。−−当社側

20、イラストなどの付属資料の作成が始まると、再びメルが編集に参加。−−双方

21、レイアウトを終了後、さらに数回の校正が入り、また扉・目次・奥付などが準備されて1冊の本としての体裁が整えられ、最終校正がなされたあと、製版用原版としてFDに登載したデータを印刷所に引き渡す。

22、そして、印刷機にかけるページ付け(たいてい16ページ)された刷版用の校正を終えたあと、印刷に入る。印刷済みの用紙から1冊の本の順序に並べた「一部抜き」を作り、ページ順に正しく並んでいるかどうかを念校して製本に移る。

 メルとの編集作業はとても時間がかかって、進行中はいらいらが続くが、終わるとハッピーになる。メルとの共同作業は、私がメルから英語の個人レッスンを受けるのに似ている。私はその特権を常々もったいないと感じているが、どのような編集をすれば、読者の皆さんにおすそわけできるだろうかと考えている。
 万人の要望に合わせた本は作れないが、本書に興味を示す方々に向けての本作りから可能であろう。印刷所にバトンタッチすれば、本はわずか1週間で完成するが、本書を読者にお届けできるのは来年の春以降になる。

(藤田修司)