■長谷川滋利選手の英語力

2002.12.16(月)

 『ベラベラ・ステーション』というテレビ番組にシアトル・マリナーズの長谷川滋利投手が出演して、香取慎吾君と英語のリスニング・テストの対決をしていた。
 このコーナーは映画やテレビの中のセリフの一部を正しく聞き取れるかどうかを試して、正しく答えれば“Perfect!”、間違っていれば“Too bad”と判定するだけの他愛のないものだが、さすがは長谷川選手、相手より何倍も難しい問題を出されたけれど、簡単に全問正解を果たした。
 長谷川選手に然るべき特訓をすれば、同時通訳をこなすだけの英語力がつくであろうと見受けた。番組中、一瞬「翻訳が難しいなあ」と、すぐに答えられない場面があったが、これは適当な日本語が見つからなかっただけにすぎない。彼が英語のまま理解していたことは、VTRを巻き戻してみればすぐに納得できると思う。
 質問中、“You did your best.”というフレーズが出題されたが、これはおなじみのdo one's best(全力を尽くす)の過去形で、映画にはよく出てくる。司会者が長谷川投手に「野球をしているとき、このフレーズを聞いたことありますか?」と問うと、即座に、いいピッチングをしたとき、「よく投げた」という意味で言われると答えていたが、この返事は見事な英語のひとことレッスンになっていたのではあるまいか。
 この番組を見た人は、“Perfect!”と“Too bad!”だけは理解できるようになるはずだが、今後たとえば香取君が成果を出したときなど“You did your best.”と言ってあげれば、視聴者にも勉強になるだろう。
 この番組がどれくらい続いているかは知らないが、香取君は最初からの出演者で、最初のころの彼はさっぱり聞き取れなかったと聞く。しかし、長谷川選手と対戦しているときの彼は8割くらい聞き取っているように見えた。生はんか的に理解できている傾向はまさしく丸暗記型の特徴で、文型を論理的に把握していないために応用がきかない代表的なケースである。
 香取君は過去に相当に数をこなしているようで、知っている言葉をほとんどリスニングできているが、知っていても別の形で登場したとたんに理解できなくなり、ヤマカンで判断するしかなくなっている。こんなとき、正確にわからないのに、わかったふりをする人が多いが、香取君は自分のわからない部分を正直に聞き返していたが、こういうタイプの人は必ず上達する。
 時間をかけて勉強したわりには香取君は応用がきかないけれど、きっといつか日常英語をこなせる日が来るはずで、芸能界の人は意志が通じればそれで十分であろう。これはこれでひとつの学習法である。
 一方、長谷川選手はきちんとした学習法を持って勉強した人らしく、ここまでたどり着けば、日ごと著しい上達を見せてくるはずだ。彼の肉体がオリックス時代とまったく違うことは一目瞭然だが、野球と英語の両方にずいぶん努力してきただろう。こんなに文武両道に優れたプロ野球選手は珍しいのではなかろうか。
 長谷川選手が引退後にアメリカのロースクールを卒業して弁護士資格でも取れば、きっと有能な代理人(スポーツ・エージェント)になるであろうが、それより英語教育に携わる人になって欲しい。彼は英語教師としても有能なはずで、将来、政治家になって、英語教育の改革に取り組めば、マスコミがどんどんこれを報道するので、英語教師の世界がプロ集団化して、やがて日本の英語教育を変える日が来るかもしれない。長谷川選手に期待するところ大である。