■シュワちゃんが加州の知事になったわけ
2003.10.15(水)
シュワちゃんがカリフォルニア州の知事に当選した。出馬した時点で、すでに当確と見られた理由は、彼が主演した映画を一本見るだけで納得がいく。では、さっそく“Eraser”を見てみよう。
シュワちゃん扮する John Kruger は証人を保護する政府の機関に所属して、法廷に立って証言する人たちを悪者から守るため、証言者を一時的にこの世から
erase(消す)して、別の人物に仕立てる仕事を任務としている。いうなれば「正義の具現者」である。
この映画でジョンが救う対象は、第一が「アメリカ国家」で、第二が不法に武器の輸出を企むアメリカ政府の要人を内部告発した
Cullen Lee という黒人女性である。
また、ジョンに頼まれてカレンを匿う女性は中国系で、彼女も以前ジョンから助けられたことがある。
この映画の冒頭のシーンで、殺し屋が Johnny という証人の舌をナイフで切ろうとするが、からくもジョンが彼を救出する。そのジョニーはイタリア系である。その場面のシュワちゃんのセリフを見てみよう。
Close your eyes.(目を閉じろ)
Shut up! you, too.(黙ってろ。お前もだ)
Don't move. (動くな)
You're dead. I need the clothes you're wearing, and your ring, your
watch, all the I.D.s now.(お前さんは死んだんだ。お前たちが着ているものが必要だ。指輪と、時計に、すべてのIDカードも、いますぐ)
Shh! Do it! (静かに。やれ)
You come with me.(お前は俺といっしょに来い)
Grab the other one.(ほかのを持て)
Let's go!(やろう!)
Put your clothes on them.(彼らにお前たちの服を着せろ)
Move!(行け!)
そのあと、ジョンは現場を擬装して、あぜんとしているジョニーに“Don't worry.”(心配するな)と言って、さらに“This
doesn't work without an audience.”(観客がひとりもいないのでは効果がないからな)と言い添えて、彼を救出した事情をほのめかしながら、警察に電話をして立ち去る。
全編のセリフがこの調子の「命令形」で貫かれている。VO型(動詞+目的語)の文に慣れることの大切さを教えてくれる作品である。上のシーンの途中、ジョニーが彼のガールフレンドに“Do
what he says.”(奴の言うとおりにしろ)となだめる場面があり、また、命を救われたジョニーは思わず感謝の言葉をいくつか口走る。
“Thank you, man. Anything, you ever need anything, you just ask me.”(ありがとうよ。お前さんが何かを必要とするときは、俺に言ってくれよな)
このセリフはアメリカ人がよく使う“Anytime you need anything, just call
me.”という慣用句のもじりである。ジョニーは似たようなセリフを何度か口にして、心から“I
owe you big time.”(俺はお前に大きな借りを作った)と礼を言う。
シュワちゃん映画の悪役の多くは WASP(白人で、アングロサクソンで、宗教はプロテスタント)たちだ。近年のハリウッド映画にはマイノリティ(少数民族)のご機嫌をうかがう映画が増えているが、いきおい「移民
VS アングロ・サクソン」という構図になりがちで、前者が後者をやっつける物語が興行収入を上げている。
加州ではしだいに移民が多数派になりつつあるし、アーノルド・シュワルツネッカーだってオーストリア系の市民である。彼のドイツ語訛りがかっこよくて、“I'll
be back.”(俺は戻ってくるぜ)などのフレーズが物真似の好材料になっている。
映画からすり込まれたシュワちゃんのイメージは大衆に好感を持って迎えられこそすれ、マイナスになる要素は何もない。セクハラ問題でシュワちゃんをおとしめようとした者もいたが、彼はタイミングよくすぐに謝罪して、過去のエッチな私生活を見事なまで一掃してしまった。
シュワッチ!映画でイメージづけされたシュワちゃんの正義漢ぶりは庶民の心に根深く浸透している。
(M.W)