■単語−−単語−−リンキングの3段階の発音練習法
2005.3.11(金)
英語の「音則」を練習する教材がアメリカにあるかどうか、現地で調べてもらいました。発音練習は外国人だけに必要なものゆえ、おもに外国人に英語を教えるアダルトスクールの関係筋を当たらせ、かつ外国人学生に第二言語としての英語を教える学校にも問い合わせましたが、どこにも見当たりませんでした。
以前紹介した“Whadayasay”(現在、本書を貸出中なので、正確な書名を確認できない)が唯一のものかもしれませんが、これとて理論的な体系書ではなく、英語の音則に「リンキング」があるという実例をいくつか示したにすぎません。私どもの知るかぎり、少なくともこの4半世紀に第二言語としての英語の発音指導法は一歩だに進歩していません。1年か2年前にNHKがニューヨークの英語学校を取り上げていましたが、まことにお粗末な内容でした。現在もあの程度です。まったく役に立てないとは申しませんが、あんな効率の悪い古典的な学習法では英語をモノにできません。
吉野義人著『科学的英会話独習法』(初版1955年)のみが英語の音則に着目し、「英語の1音節は原則としてCVC型(子音+母音+子音)で、|CVC|CVC|CVC|CVC|……と並ぶ音節が|CV|CCV|CCV|CCV|……となって、音の小休止が母音止めになる」ことを指摘しています。しかし、同書もまた問題点を提起しただけで、具体的な練習法を示せたわけではありません。学者の怠慢というより、問題点に気づけない学者ばかりいることを示しています。
音声学の奥行きは無限でしょうが、入口は非常にシンプルです。ピアノはピアノの音しか出せないし、バイオリンはバイオリンの音色しか奏でません。鐘はゴーンと鳴り、猫はミャウと鳴くだけです。
人間が出せる音声は、細かく分ければ数千種にのぼるようで、現在のアメリカ人が出している音は地域差・年代差・職業差・階級差・個人差などを加味すれば、やはり千種は下らないような気がします。
しかし、GA(General American=米国の標準音)は45種しかありません。GA音での平均的な口の動かし方と喉の使い方をマスターすれば、より正しい音が出せるようになり、やがて相手が話す音声をキャッチできるようになります。練習法は下記の3段階です。
第1段階は45個の単音の練習です。たとえば、〔t〕〔d〕〔n〕〔l〕では舌先を上の歯の後ろの歯茎に押しつけて音を作りますが、日本語の舌の使い方と根本的に違っています。「タ行」「ナ行」「ラ行」「ダ行」では、舌先を上の歯の歯茎に軽く触れてはじくだけですが、英語は口から出そうになる音を完全封鎖したのち、急に舌を離して音を破裂させたり、鼻からあるいは舌の両側から音を抜いたりします。長らく日本語の音しか出さなかった人にとって、かなり難しい練習になります。声楽家が基礎音の練習を常に怠らないのと同じ態度で挑む必要があります。
第2段階は単語の練習です。たとえば with なら、最初は面倒でも〔w〕〔-i-〕〔th〕の3つの音をそれぞれ練習しながら、しだいにくっつけていきます。音の組合せは2千通り以上あるので、大変なようですが、パターン化を考えずに、個々の単語を練習を積めば、いつしかルールが身についています。とりわけ「子音ブレンド」の練習が重要です。
第3段階は句以上の練習です。一例を挙げると、crazy in Neverland という句では、in
の〔-i-〕が crazy の語尾音に吸収され、〔n〕は Neverland の語頭音に吸収されます。リンキングによる音の消失が起こるのです。この音則では、99%の人でin
が消えると言えますが、状況しだいで音が消えないこともあります。もちろん個人差もあります。
当社が主唱する「音則法」は、第2段階以上に関係してきますが、とくに第3段階で大切になります。当社は一般的な法則を作ってはいますが、下記の2つの理由で発表を差し控えています。
(1) 個人差が相当あるので、さらなる整理が必要。
(2) まず第2段階までの考え方を社会化しておかないと、法則だけがつまみ食いされて、ひとり歩きして、取り返しのつかない方向に突っ走ってしまう。(テレビが取材に来たが、○○式フォニックスにしてくれ、などとたわけた提案をしてくる)
ゴルフで練習場の打ち込みをせずいきなりコースに出ると、ボールが右に飛んだり、池にポチャンしたり、足元にチョロっと転がったりしますが、それと同じで、単語の正しい発音ができずして、リンキングだらけの英文を言えるわけがありません。宮里藍ちゃんを見習いましょう。
自分が言える文なら聞いてほとんど理解できますが、自分が言えない文の意味を汲み取るのは容易でありません。優れた教材は優れた利用者に育てられます。
(K.T)