■“chance”は“偶然”訪れる
2008.4.5(土)
Would you like to have a drink under cherry trees? Why don't we go and see cherry blossoms?
東京は各所で桜が満開ですが、みなさんの周りはいかがですか?お花見には行きましたか?
かくいう私は、花粉の苦しみから逃れられませんが、桜が咲き誇るこの数日間だけはガマンして外に出て“散歩花見”を満喫しています。くしゃみ鼻水が止まらなくなるので、一箇所に留まって飲食する花見はできませんが(涙)。
日本人がどうしてこれほど桜に心を奪われ、動かされるのか?よく言われるのが、「花の命の短さが心を揺さぶる」というお話。桜はいっせいにすべての花が咲き乱れ、そして数日で散ってしまいます。その「儚い美しさ」が日本人の琴線に触れるのでしょうか。日本人には、「死んでいくもの」「散っていくもの」への捉え方において、すごく独特の価値観があるように感じます。
さて、話はまったく変わりますが、今朝スポーツニュースを見ていた家人が「おもしろいねえー」と言っていたので、そちらに目をやると(Actually, I'm not interested in any sports...)そこには、昨日メジャーリーグでデビューした福留孝介さんという選手が写っていました。中日からカブスに入団して最初の試合を3打数3安打3打点、1四球の大活躍で飾ったそうです。
スタンドではカブス・ファンたちが応援プラカードを作っていたのですが、そこには<偶然だぞ>とい書いてあるのです(笑)。「おそらく“chanceだぞ”を辞書で和訳したんでしょうかねえ」と、テレビでコメントされていました。打席に立ってあちこちに見える<偶然だぞ>の文字……。なかなかシュールだと思います。まあ、変に力まずにリラックスできそうですけどね(笑)。
福留選手を応援するときに使いたかったんだと思われる“chance”は日本語では「絶好の機会」または「好機」とでも訳せるとこでしょうが、「好機」って、現在の日本では新聞とかでしかお目にかかれないですよね……。ほとんどカタカナの「チャンス」でまかなえている言葉という印象です。
……と、思っていたら。ちょっとネットで調べてみると、どうやら“It's gonna happen.”をGoogleで翻訳にかけると「偶然だぞ」になるようです。自動翻訳はおもしろい「迷訳」をよく生み出しますが、これもその一例でした。野球の応援で“It's gonna happen.”と使うのは初めて知りました。(まったくスポーツ観戦をしないので……。)訳すと「何かが起こるぞ」くらいの意味になりますが、馴染みのない私には「おもしろい応援の仕方だなあ」と新鮮でした。
ついでに、“chance”を、『ランダムハウス』で調べてみました。
1.偶然(の出来事) 2.運、運命、巡り合わせ 3.〜するという見込み、公算、可能性、 4.機会、好機、チャンス、きっかけ 5.〔野球〕〔クリケット〕刺殺 6.冒険、危険、賭け 7.(宝)くじ……と続き、<中英<古仏…chance,cheance<俗ラ…cadentia(出来事、偶発事)→cadenza と記されていました。
また、ラテン語の辞書を引くと、“cado”という単語に、1.落ちる、倒れる 2.降下する 3.注ぐ、流れ下る……22.(偶然)起こる、逆遇する、ある人に与えられる、分配される と、あります。現代英語の“happen”に近いようですね。
『英単語マニア』32ページの“cas”も「落」を意味する語源で、occasion, incident, casual……などの、日常におなじみの単語を作っています。こうやって、ひとつの単語をたどってみると、そこには無限に広がる語源の世界。すでに知っている単語をより深いところまでとらえる“chance”は朝起きてから眠るまで、あちこちに“happening”だらけです♪
【注】フランスが昔はガリアと呼ばれていたことは、ジュリアス・シーザー著『ガリア戦記』で有名です。ガリアがローマの支配を受けたころ、ラテン語が移入されて、「俗ラテン語」が形成されました。その後、民族大移動の折、フランク族に侵略され、しだいに「古フランス語」が形成されていきます。さらに、ノルマン人が入ってきて、やがて彼らは「ノルマン・フランス語」を使うようになり、1066年にはブリテン島でノルマンによる大征服があります。英語はそのノルマン・フランス語の影響を受けて、「古英語」から「中英語」に変化していきます。chance はフランス語から中英語時代に入ってきた言葉ですが、俗ラテン語では cadentia だから、decadent(退廃的な)などの単語に見られる語源<cad>に由来します。ラテン語から英語までの間にかなり変質しています。
(K.Tashiro)