■“The Apartment”『アパートの鍵貸します』より
2001.6.9
Thank you だけではない thank の使い方
“Thank you”と言って、“You're welcome.”と投げ返すキャッチボール・フレーズは、人と人が接しているかぎり、1日のうちに何度も口にされる言葉です。しかし、thank と you が地獄の底まで連れ添う夫婦かと言うと、そういうわけでもありません。ビリー・ワイルダー監督作品の『アパートの鍵貸します』(The Apartment)の中に次のようなセリフがありました。
B:Yes, sir. I want to thank you very much.
S:Oh, don't thank me.
Thank your friends here.
They're the ones who recommeded you.
ジャック・レモン演じるバクスター氏が自分を重役ジュニアに抜擢してくれたフレッド・マクマレー扮する上司のシェルドレイク氏に「私はあなたにお礼を言いたい」と言ったのに対して、「いや、私に礼を言わなくてもいい。ここにいる君の仲間たちに礼を言いたまえ。彼らが君を推薦した人たちだから」と返されたシーンです。
バクスター氏は自分のアパートを重役たちの情事のために提供して点を稼ぎ、シェルドレイク氏にも便宜を図ったおかげで昇進を果たすわけですが、そのことを祝福して重役たちがバクスターの新しい個室に集まってきたときのやりとりの一部が上記の英文です。
thankは具体的には「礼を言う」ことで、その言葉が口から出てくるとき、心の中に「感謝する」気持があるわけです。しかし、礼を述べる対象がいつも相手(you)だけとは限りません。
“Thank you.”と言われたときの返事の99%は“You're welcome.”かもしれませんが、「私にではなく、オーシュリさんにお礼を言ってください」という場面では、“Don't
thank me. Thank Mr. Oechsle.”と言います。ただし、そのあとに理由を添えないと、相手は目を丸くするだけでしょう。
さて、このフレーズを練習するとき、ジェスチャーを添えて言ってみます。すなわち左手で相手を押しとどめるような動作をしながら“Don't
thank me.”と言ったあと、その手を自分の横にいる人に差し向けるようにしながら“Thank
Mr. Oechsle.”と言うことで、<thank+人(目的語)>の使い方をマスターしてください。
なお、“You're welcome.”は簡単な発音ではありません。You're は「ヨアー」のような感じで言い、welcome
の「ウ」では思いきり両唇を前方に突き出し、「エル」では素早く舌先で上の歯茎を押さえ、舌を離すとき「カム」と言います。最初はゆっくりサウンドの1つずつを正確に言い、口の筋肉が正しく動かせるようになったら、思いきり口をリラックスさせて“You're
welcome.”と言ってみてください。各サウンドの基礎練習には、PV法を利用するのがいちばん手っとり早いでしょう。