■“Aliens”『エイリアン』より

2001.6.11

whoopee-fucking-doをどう訳しますか?

 英語はもはや fuck という言葉から逃れられません。キリスト教は英語の中から fuck という単語を消してしまおうとして、辞書に載せることを避けてきましたが、そのせいかアングラ化して、バクテリア的にはびこり、英語話者にしぶとく寄生しつづけてきました。
 たとえば、fucking (fuck+ing) や fucked (fuck+ed) などの派生語が日常的な存在になっています。映画“Aliens”の登場人物の大半が宇宙海兵隊員ですから、さながら fuck の見本市で、この語のさまざまな使われ方が紹介され、"Whoopee-fucking-do !" は次のような場面で使われていました。

 M:She's supposed to be a kind of consultant.
   Apparently, she saw an alien once.
 H:Whoopee-fuking-do !
   Hey, I'm impressed.

 アイリアン退治に出掛ける宇宙船の中で、主人公のリプレイについて、女性海兵隊員のミラが「彼女は顧問みたいなものでしょう。前に一度アイリアンに会ったらしいの」と言うと、ヒックス二等兵が「超すげえじゃん。俺、ジーンときたぜ」とひやかすシーンの会話が上記の会話です。
 ここでの“Whoopee-fucking-do !”には“So what ?”(それがどうしたって言うの?)というニュアンスを含んでいるみたいですが、なぜそうなるかは語源考がテーマになります。
 すなわち、whoopee-fuking-do は whoop-de-do(どんちゃん騒ぎ)と whoopee(ワーイ!)をごちゃまぜにして、de の代わりに fucking を入れ込んだ形です。
 whoopee と whoop-de-do の両語は、ともに whoop からの派生語です。 whoop は「ワーイ」という意味で、名詞・動詞・間投詞として使われますが、古英語時代は「脅す」という言葉で、ゴート語では「自慢する」という意味だったようです。
 whoopee での語末の -ee は間投詞を作る接尾語ですから、この語は間投詞です。whoop-de-do は子供たちが使うような言葉ですが、語末の do は -doo とも書き、これは cock-a doo-dle-doo(コケコッコー)での擬声音と同じものです。
 したがって、“Whoopee-fucking-do !”は何かを大袈裟に揶揄する言葉で、使われる場面ごとに微妙に違ってくるので、じつは訳しようがないのです。あえて言えば、この fucking は「超」に相当する言葉かもしれません。
 たとえば、日本語の「おいしい仕事」という場合の「おいしい」には「うまみがある」という意味を含みますが、“Delicious !”という語もそういう使われ方をします。そして、fucking には単語を分離させる力があるので、delicious を2つに割って、その間に挟んで“De-fucking-licious !”と言えますが、これは「超うめえ!」という意味で、もはや fuck の原義が消え去っています。
 なお、delicious はラテン語に由来して、分解すると<delight+ous(形容詞語尾)>ですが、英語話者は語頭の de- を常に接頭辞のように感じてしまうようです。
 ちなみに、fuck はセックス表現の「やる」という意味で、男性の間で使われてきた麻薬のような用語ですが、現在の fuck は効きめの弱いマリファナのような言葉で、英語話者の間では原義よりうんとタブー度の低い語として日常化されています。とはいっても、fuck がタブー語であることに変わりはありません。日本人は使わないほうが無難です。いや、使うべきではありません。