■“Remember the Titans”より
2003.6.13(金)
映画に見る高校生英語
表題の映画はウオルト・ディズニー・プロの製作だから、高校生モノにもかかわらず、fuck・shit
類の公共での使用禁止用語が1語も出てこない。現地ではもちろん“GA”(General
Audience =同伴者なしで子供が見ていい)マークが入っているはずだ。
その代わり、political correcct(差別的表現を避けるために政治的配慮をした言葉)も使わず、むしろ、ところどころに
negro とか fruitcake(おかま)といった差別的用語を混じえて場面の雰囲気をかもし出し、とりたてて卑猥な単語を使わなくても、見事な脚本になることを証明している。感動して、胸がじーんと熱くなる佳作である。
この作品のキーワードは“integrate”(異なる人種・文化・宗教・階層などの人たちを社会に融合させる)をテーマにしている。一口で言えば、白人と黒人がアメフトを介して、心をひとつにしていく物語である。冒頭に“based
on a true story”(実話に基づく)と字幕が出てくることからして、用語の使い方が実際と少し異なっていたとしても、現実味の濃い画面になっている。
時は1971年、所は Virginia 州 Alexandria で、フットボール・コーチの娘による「教育委員会が白人の高校と黒人の高校をひとつにまとめて
T. C. Williams High School としました」というナレーションから映画が始まる。
高校の合併後、同校のアメフト・チームに黒人ヘッドコーチが起用される。白人コーチが“Work
under you?”と言って、いったんは協力を拒むが、白人生徒のキャプテンが“I'm
not playing for him.”(him =黒人コーチ)とごねたこともあって、けっきょく次席コーチを引き受けざるをえなくなる。
さっそく強化合宿が始まるが、黒人生徒と白人生徒が事あるごとにいさかいを起こし、コーチもまた角突き合わせて対立する。しかし、練習を通じて白人と黒人の両主力選手が互いの能力を認めたことをきっかけにして、チームが団結し、最初の試合で勝利する。
選手たちが戦勝祝いに町に繰り出すが、黒人と白人の共通の遊び場が見当たらないようだ。そのとき、カリフォルニアから転校してきた黒人に差別感を持っていない白人生徒が黒人たちを白人専用のバーへと誘う。
白:Come on, man.
黒:No, man.
白:What, man? It's on me, man. We party on. Let's go.
黒:Look − look here, man. All right? This here's Virginia. All right?
They got problems with, you know − they don't want us in there, man.
白:Oh, man. That's history, bro. It's on me. Come on.
黒人生徒が「ここはバージニアだぜ。中にいる連中は俺たちが入るのをいやがってるんだぜ」と尻込みするが、白人生徒は「俺のおごりだ。入ろうよ」と執拗に誘う。
呼びかけ言葉の man と bro、そして you know と look here を外して、さらに
come on、no、what?、let's go、all right、oh といった短い常用表現を除いた残りが話の中身だが、さらに画面では黒人たちが「お前はわかってないなあ」というジェスチャーとするので、全部を正確に聞き取れなくても荒筋は容易に理解できる。
とはいっても“We party on.”という骨太の表現が割り込んでいる。party は「パーティなどで大いに楽しむ」という自動詞で、on
には「続く」という意味が含まれるので、party on は「楽しんでいる最中だ」と訳せるが、これは
go on や keep on 同様の句動詞と見なせる。
そして、彼らはバーのドアを開けるが、席が空いているにもかかわらず、店の主人から“Well,
this is my establishment. I reserve the right to refuse service to anybody.
Yeah, that means you, too, hippi boy.”(俺の店だから、誰であれ俺にはサービスを断わる権利があるんだ。それは、貴様のことだよ、ヒッピーさん)と言って生徒たちを追い払う。
店を出た瞬間、黒人生徒が“What'd I tell you, man?”と白人生徒に文句をつける。白人が“I
didn't know, man.”と謝ると、黒人はさらに“I told you. What you mean you
didn't know? You think I was playing with you?”(言ったじゃねえか。知らんなんて、どういう意味だい?てめえ、俺が冗談を言ってたとでも思ったのかよ)と追求して、とどのつまり白人と黒人のグループに分かれてしまう。
この場面でも生徒たちが呼びかけの man を連発するので、若者たちの気分がじつによく表現されていると私は感じたが、アメリカ人たちに言わせると、「人種対立はこんな甘ちょろいものじゃあないよ」と一笑して、無表情に戻る。
この出来事はわずか30年前の話で、そのころ私はワシントンDCやメリーランド州を訪れたことがある。バージニア州はメリーランド州と接して南に位置しているが、地元の人から同地の白黒の対立について詳しく話を聞いたが、あのころはまったく実感がわかなかった。この映画を見て、私はアメリカのいろいろな社会的側面をいま再発見している。だから、この作品は私にとって単なるスポコン物ではない。
なお、先に示した“What you mean you don't know?”は助動詞を欠いているし、文法的には理屈に適わないフレーズだが、実際に使われている黒人の専用的表現で、慣れないとついていけないが、本物の高校生英語はこの映画よりもっとうんとわかりずらい。
“Remember the Titans”は現代米語を勉強するにはうってつけの教材のひとつだから、何度も見て、気になるセリフを書き写すくらいでないと、ほかの映画の若者言葉も理解できないと私は思う。
(藤田修司)