■“Negotiator”『交渉人』より
2003.11.17(月)
アメリカ映画の中にはTAがいっぱい
「TAとは何か?」という質問の回答にいつも戸惑っている。TAとは
Transactional Analysis の acronym(頭文字)による abbreviation(短縮形)で、日本では「交流分析」と訳されているが、奥行きの深い心理学だから、ひとことでは説明しずらい。
そこで、一計を案じて、最近は「心理学」をテーマにしたハリウッド映画を紹介することで説明に代えている。なぜなら、近年のアメリカ社会は、あらゆる意味でTAの影響を強く受けており、それがしばしば映画のテーマになっているからである。“Negotiator”
(交渉人)はその典型的な作品だが、代表的な場面を紹介しておこう。
アメリカでは人質を盾にとる犯罪を想定して、犯人との取引きに当たる専門の警察官を常に養成しているが、彼らを
negotiator と呼んでいる。黒人警官の Danny Roman はそのひとりだが、罠にはめられて、殺人者に仕立てられる。ダニーは自分の身の潔白を証明するため、悪徳警官たちを人質に取って、孤軍奮闘するのだが、真犯人の仲間の
Niebaum を問い詰めるシーンがTAの手法のひとつである。
I want you to look me in the eye, Niebaum.
上の文はダニイがニィーバムに「俺の目を見ろ」というシーンだが、こんな場面
ではたいてい<I want you to+不定詞〜>型の文が使われる。数えてはいないが、この映画では10回以上(?)使われているような気がする。
ダニイの質問にニィーバムが答えると、“I know you're lying.”(お前が嘘をついていることは俺にはわかっている)と言うと、ニィーバムが「お前は俺の心を読めるのか」と反駁する。
Oh, you know it, huh?
What, you can read my mind, Roman, is that it?
この言葉を聞くと、ダニイは「目は嘘をつけない」と言い返して、人の心を見抜くレッスンを受けたことをニィーバムに告げる。
I'm reading your eyes.
The eyes can't lie.
Didn't you know what I was doing?
A quick lesson in lying.
We study liars.
そして、ダニイは“… neurophysiology tells us …”と言って、神経生理学の立場から目の動き方について解説したあと、再び同じ質問をニィーバムにぶつける。ニィーバムは目の動きを止め、じっとダニイを見つめて、再び同じ返事をする。すると、タレコミ屋の Ruby が“That is a fuckin' lie.”(そいつは大嘘だ)と口を挟む。ダニイが重ねて神経生理学の説明をする。
It's not just your eyes, Niebaum. It's everything. If you cough, sneeze, uh, cross your legs, scratch your ass, they'll all telltale signs. You can't cheat. You can't beat the system.
上のセリフは「目だけでなく、咳も、鼻を鳴らすことも、脚を組むのも、尻をかくのも、すべて“暴露する装置”のサインだから、ごまかせないし、このシステムから逃れられない」という意味だが、このあたりの2人のやりとりは非常に興味深い。スペースの関係で細部を紹介できないのが残念だ。
“Negotiator”は単なるアクション物ではない。アメリカの警察における教育、また行政の制度などについても教えてくれる作品で、井の中の蛙の日本の警察よりはるかに進んでいると思う。近年のわが国では急速に犯罪が増えているが、警察の対応をうかがうかぎり、犯罪者たちにかなり遅れをとっているとしか思えない。
そういえば、この映画でもルビイが警察のコンピューターのソフトを評して“The
fuckin' cops are always two steps behind.” (警察野郎はいつも2段階ほど遅れてるぜ」というセリフがあった。アメリカのお役所もまた、民間より遅れているみたいですね。
(藤田修司)