■die と kill のはざまで

2002/02/18

 中・高校生のクラスで「彼の息子は戦死した」という英作の宿題について教えてくれと言われました。
 せら「どこがわかりませんか?」
 生徒「戦死という単語がわかりません」
 せら「戦死とはどんなことですか?」
 生徒「戦争で死ぬことです」
 以上のやりとりのあと、出てきた解答は“His son was died in the war.”でした。
 せら「die という単語はどんな意味ですか?」
 生徒「死ぬという意味です」
 せら「どうして was died となるんですか?」
 生徒「戦争で殺されたから受身形にするんではないですか?」
 せら「では、英語で殺すは何と言いますか?」
 生徒「kill です」
 せら「では、kill を使って言ってみてはどうですか?」
 このあと、あれこれ誘導しても、なかなか答が出てこないので、根負けして下記の答を教えてしまいました。

  His son was killed in the war.

 生徒「kill は殺すことなんだけど……」
 せら「あなたは戦争で“殺された”ことが戦死だと言いましたよ」
 生徒「でも、死んだんだから……」
 こんなとき、私は授業時間内にこの問題を解決するための詳しい説明はしません。ただし、die という言葉が「生命を失う」ことだから「花なら枯れる」ことであり、kill は「生物の生命を奪う」ことだから「殺す対象として kill のあとに鳥とか人がくっつきます」とだけ言っておきます。ときには die が自動詞で、kill が他動詞であると言い添えることもありますが、なにはともあれ、英単語が持っている原義について、自分で考えてみる機会を与えることが大切だと考えています。
 そのさい、「日本語とくに漢字に振り回されるな」ということを併せてアドバイスします。今回の作文では、最初に「戦死」という言葉にとらわれてしまいました。次に「戦争と死ぬが強く結びついて、戦争では敵に殺されるので、死ぬという意味の die を使って受身形にしようとした」わけです。die を使うなら、受身形にはなりません。

  His son died in the war.

 もっとも、上記の言い方は一般的な表現で、実際の会話では次のように言うことのほうが多いかと思います。

  His son has died in the war.
  His son had died in the war.

 上の文が<現在完了形>ですから、最近のことで、下は<過去完了形>ですから、すでに歴史になっていることを話しています。
 日本人はとかく電子辞書を持ち歩いて、わからない単語があるとすぐに検索していますが、私は賛成しかねます。私たちは「英単語をたくさん知っていない」からこそ「知っている単語を上手に活用するため、英語に訳すべき言葉を日本語で言い換えてみる」ことが大切なのではないでしょうか。「日本語なら1つの言葉を内容を変えずに別の言葉に言い換えるだけの知識を持っている」のです。
 以上を要約すると、日本語を英語にするとき、目の前の日本語にとらわれず、自分の知っている英語だけで言えるよう別の日本語に言い換えてみることが先決で、その思考力を養うことが英作文の力を向上させるのです。
 そのためには英単語を日本語の意味に対比させて一対一で逐語的に丸暗記するのでなく、英単語が持つ意味に迫ることが肝要です。原義を追究する作業は面白い物語を読むような楽しさがありますが、丸暗記なんて辛いだけです。

(世羅洋子)