「書評」より〜小川道子著『アメリカの高校生』

2003.7.28(月)

アメリカの公立高校に勤めた教師の“体験記”

 日本でもテレビ放映されたビバリーヒルズ・シリーズを見て、アメリカの高校生の派手な暮らしぶりや服装に目を見張った人もきっといたはず。これが、決してドラマ・フィクションでないことが、本書を読み進むうちに納得できてくる。というか、事実は小説より奇なりで、現実はもっともっとシビアで、かつ、バラエティーにあふれている。
 本書は、米ニュージャージー州の公立高校で5年間、教壇に立った日本人教師の体験記。失恋して泣きじゃくる、ヘソだしルックの女子高校生を著者自ら慰める授業シーンから書き起こしていて、まず、度肝を抜かれる。カウンセリングを含め、こうした失恋騒ぎに学校中が真剣に対応する様子が笑えない現実としてあることに、2度ビックリという具合に、軽いカルチャーショックの連続。
 著者の勤めた高校は“平均的な公立校”。それでも、「毎日どこかの学校で起こって」いるような麻薬、銃、未婚母などの問題を抱え、教師はその対応に追われる。アメリカのあらゆる問題が、多感な子どもの心と生活に濃縮して蓄積され、やがて表面に噴出してくるような、凄まじさがうかがえる。
 学ぶべき考え方やシステムを含め、アメリカの現状と日本の将来を考える意味でも、著者の貴重な体験は、一読に値する好著に結実した。

(新日本教育図書株式会社 1500円)

−−『公明新聞』2003.7.21(月)「書評」より